11月に入ると、花屋の店先には赤や白、桃色のシクラメンがずらりと並びはじめます。反り返った花びらが炎のように立ち上がる姿は、冬の鉢花の代表といってよいでしょう。ご自宅用に選ぶ方もいれば、お歳暮やクリスマスの贈り物として受け取る方もいらっしゃいます。
その一方で、「買ったときはきれいだったのに、年が明けるころにはぐったりしてしまった」という声もよく聞かれる花です。けれども、シクラメンが弱ってしまう原因の多くは、置き場所と水やりのちょっとした行き違いにあります。性質を少し知っておくだけで、11月に迎えた株を春まで咲かせ続けることは十分にできます。
この記事では、よい株の選び方から、置き場所、水やり、花がらの取り方、肥料、よくあるトラブル、そして春以降の過ごし方までを、順番にまとめました。手元のシクラメンを眺めながら、気になるところから読んでみてください。
この記事でわかること
- シクラメンがどんな植物か(原産地・和名・分類)
- 店頭でよい株を見分ける4つのポイント
- 置き場所と温度の目安、暖房との付き合い方
- いちばん失敗が多い水やりのコツと、底面給水鉢の使い方
- 花がら・黄色い葉の取り方、肥料の与え方
- ガーデンシクラメンとの違い、よくあるトラブル、春以降の夏越し
シクラメンはどんな植物?——地中海生まれの「篝火花」

シクラメンって、冬になると急に見かけますよね。もともと寒い国の花なんですか?

原産は地中海沿岸です。夏は乾いて暑く、冬は穏やかで雨が降る土地なので、涼しい季節に葉を広げて花を咲かせるんですよ。

ボクたち、暑いのは苦手なんだ。涼しくて明るい場所が、いちばん落ち着くんだよ。
シクラメンは、地中海沿岸から中近東にかけて自生する植物をもとに改良された園芸植物です。いま鉢花として出回っているものの多くは、「ペルシクム」と呼ばれる野生種を親にして、ヨーロッパや日本で品種改良が重ねられてきたものです。土の上に丸い塊(いわゆる球根)があり、そこから葉と花茎を次々に伸ばします。
自生地は、夏に雨が少なく乾燥し、冬に雨が降る気候です。シクラメンはそのリズムに合わせて、秋から春の涼しい時期に葉を茂らせて花を咲かせ、暑い夏は葉を落として球根で休む、という暮らし方をしています。家庭で育てるときに「暑さが苦手」「涼しい場所を好む」と言われるのは、この生まれ育ちによるものです。
分類は「サクラソウ科」
シクラメンは、かつてはサクラソウ科、のちに一時期ヤブコウジ科に分けられていたこともありました。その後、遺伝子の研究にもとづく新しい分類体系で、ヤブコウジ科に移されていた仲間がふたたびサクラソウ科にまとめられ、現在の園芸の解説ではサクラソウ科とされるのが一般的です。古い図鑑と新しい図鑑で書き方が違うことがあるのは、このためです。
「篝火花」と「豚の饅頭」——ふたつの和名
シクラメンには「篝火花(かがりびばな)」という和名があります。反り返って上を向く花びらが、夜を照らすかがり火のように見えることからの名前です。植物学者の牧野富太郎が、歌人の九条武子の「かがり火のよう」という言葉を受けて名付けた、という話が伝えられていますが、これは言い伝えとして紹介されることが多いものです。
もうひとつ、「豚の饅頭(ぶたのまんじゅう)」という、少し意外な別名もあります。ヨーロッパでは豚が球根を好んで掘って食べたことから「豚のパン」にあたる呼び名があり、その訳として生まれた名前だといわれています。明治時代に日本へ入ってきた当初は、パンがまだなじみの薄いものだったため「饅頭」と訳された、という説明もあります。
冬の鉢花として定着するまで
明治のはじめに日本へ伝わったシクラメンですが、当初は栽培が難しく、一般にはなじみの薄い花だったとされています。大正の終わりごろから国内での生産が少しずつ広がり、戦後には各地の産地で品種改良と栽培技術の工夫が進みました。冬に花の少ない時期に、室内で長く咲き続けることから、年末の贈り物や冬の飾り花としての地位を築いていきました。いまでは、11月から12月にかけて店頭に並ぶ鉢花の代表格です。
よい株の選び方——店頭で見たい4つのポイントと、贈り物のとき
シクラメンは、買ったその日がいちばんきれいな花ではありません。よい株は、そこから春までの数か月、次々とツボミを上げて咲き続けます。店頭で選ぶときは、いま咲いている花の数よりも、「これから咲く力」を見るのがコツです。
1.葉が密で、株の中心にツボミがたくさんある
葉の数と花の数はおおむね比例するといわれます。葉が多く、ぎゅっと詰まっている株ほど、これから上がってくる花も多くなります。葉をそっとかき分けて株の中心をのぞき、大きさの違うツボミがたくさん控えているかを確かめましょう。小さなツボミから咲きかけのものまで段階的にそろっている株は、長く楽しめます。
2.株全体が締まっていて、葉が上に立ちすぎていない
葉が株のまわりに広がり、全体が丸くこんもりとまとまっているものが理想です。葉や花茎がひょろひょろと上に伸び、株の形が崩れているものは、暖かすぎる場所や光の少ない場所に置かれていた可能性があります。そうした株は、家に連れて帰ってからも弱りやすい傾向があります。
3.花茎がしっかりしていて、球根が土の上に出ている
花を支える茎がまっすぐで太く、ぐらつかないものを選びます。また、球根の上の部分が土から少し顔を出している株は、葉やツボミの付け根が乾きやすく、病気になりにくいとされています。球根を指で軽く押してみて、ぶよぶよしていないかも見ておくと安心です。
4.葉の裏に虫や傷みがない
葉を一枚めくって裏側を確かめましょう。ツボミや新しい葉の裏には、アブラムシなどの小さな虫がつくことがあります。黄色く変色した葉や、灰色のカビが生えた葉、花びらが茶色く溶けたような花が目立つ株も避けたほうが無難です。
選ぶときのチェックリスト
- 葉が多く、株の中心に大小のツボミがたくさんある
- 葉が横に広がり、株が丸く締まっている
- 花茎がまっすぐで太く、ぐらつかない
- 球根の上部が土から少し出ていて、押しても硬い
- 葉の裏に虫がいない、カビや黄色い葉が少ない
もうひとつ、持ち帰るときにも気を配りたいところです。11月以降の冷たい風や、車の中の暖房に長くさらすと、それだけで株が傷むことがあります。袋や紙で包んで、まっすぐ寄り道せずに持ち帰るのがおすすめです。
贈るとき・受け取ったときに
シクラメンは、お歳暮やクリスマス、年末のご挨拶の贈り物としても人気があります。いただいた株を長く楽しむためには、包装のセロハンや鉢カバーをはずし、次の章でご紹介する、窓辺の明るく涼しい場所へ移してあげることが第一歩です。ラッピングのまま置いておくと、蒸れや水のたまりの原因になります。底面給水鉢かどうかも確かめて、水やりの方法を決めましょう。
なお、シクラメンの「シ」と「クラ」が「死」と「苦」を連想させるとして、病気のお見舞いには避けたほうがよい、という俗説を耳にすることがあります。また、土に根を張る鉢植え自体を「寝付く」につながるとしてお見舞いに選ばない方もいます。いずれも言葉の響きや言い伝えによるもので、気にするかどうかは人それぞれです。贈る相手やご家族が気にされそうな場合は、別の花を選ぶのもひとつの心づかいでしょう。
置き場所——日当たりのよい窓辺で、暖房の風は避ける

寒さに弱そうだから、暖房の効いたリビングの真ん中に置けば安心ですよね?

実はそれが一番弱らせやすいんです。暖かすぎると葉や茎が伸びて、株がやわらかく傷みやすくなります。明るくて涼しい窓辺が向いています。

暖房の風が当たると、ボクの葉っぱはすぐカラカラ。のどが渇いてぐったりしちゃうよ。
シクラメンが喜ぶのは「明るくて、涼しい場所」です。冬の室内なら、日中によく日が差し込む窓辺がいちばんの特等席になります。光が足りないと、葉や茎が間延びしたり、花の色が薄くなったり、ツボミが上がってこなくなったりします。
温度の目安
適した温度は資料によって少しずつ幅がありますが、たとえば神奈川県の案内では10〜20℃程度、園芸店の案内では日中12〜18℃、夜間は5℃を下回らないように、とされています。おおよそ「日中は人が少しひんやり感じるくらい、夜は凍えない程度に涼しい」と覚えておくとわかりやすいでしょう。20℃を大きく超える部屋に置き続けると、株が疲れて花が早く終わりやすくなります。
暖かすぎる部屋で傷む理由
暖房の効いた部屋では、葉や花茎が徒長(ひょろひょろと伸びること)して株の形が崩れ、やがて株が休みに入ろうとして花が咲かなくなることがあります。暑さで株がやわらかくなり、根元から腐ってしまうこともあります。さらに、暖房で空気が乾くと、ツボミが咲かずに枯れてしまうことも。エアコンやヒーターの風が直接当たる場所、床暖房の上、テレビなど家電の近くは避けましょう。
夜は窓辺から少し離す
昼間は暖かい窓辺も、夜になると外の冷気で急に冷え込みます。窓が凍るほど冷える地域や、明け方に冷え込みが強い日は、夜だけ部屋の中ほどへ移すか、厚手のカーテンの内側に置くと安心です。ただし、移す先が暖房の真ん前にならないように気をつけてください。
置き場所の早見メモ
- 日中:よく日の当たる窓辺(ガラス越しの光)
- 夜:窓から少し離す、または厚手のカーテンの内側
- 避けたい場所:暖房の風が当たる場所、床暖房の上、暗い玄関や廊下
- 時々鉢を回して、株全体に光を当てる
また、株の片側だけに光が当たると、葉や花がそちらに傾いてしまいます。数日に一度、鉢の向きを少し回してあげると、形よくまとまります。
水やり——いちばん失敗が多いところ

シクラメンを枯らしたことがあって……。水は毎日あげていたんですけど。

毎日だと多すぎることが多いんです。土の表面が乾いてから、球根にかけずに鉢の縁から。それだけでぐっと長持ちしますよ。

じゃあ、乾いたかどうかはどうやって見ればいいんですか?

土を指で触るのと、鉢を持ち上げて軽さを確かめるのが確実です。迷ったら少なめが失敗しにくいですね。
シクラメンの管理で失敗する一番の原因は、水やりだといわれています。水が多すぎれば根が傷んで腐り、少なすぎれば葉も花もぐったりと倒れてしまいます。とはいえ、ポイントを押さえれば難しくはありません。
基本は「乾いたら、たっぷり」
土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷり与えます。受け皿にたまった水は、そのままにすると根腐れの原因になるので、その都度捨ててください。冬の室内なら、置き場所や鉢の大きさにもよりますが、毎日ではなく数日に一度くらいになることが多いはずです。日数で決めるより、土と鉢の重さで判断するのが確実です。
乾いたかどうかの見分け方は、土の表面を指で触って湿り気がないか、そして鉢を持ち上げたときに軽く感じるか。水をやった直後の重さを一度覚えておくと、比べやすくなります。どうしても判断がつかないときは、花が下を向いて「おじぎ」をし始めたら水切れのサインなので、急いで水を与えましょう。
株の中心(球根)に水をかけない理由
水やりのとき、いちばん気をつけたいのが「株の中心に水をかけないこと」です。シクラメンの球根の上には、これから伸びてくるツボミや新しい葉が密集しています。ここに水がたまると、湿気がこもって灰色かび病などの病気が出やすくなり、球根そのものが腐る原因にもなります。花や葉の上からじょうろでかけるのも避けましょう。
水をやるときは、葉を片手でそっとかき分けて、鉢の縁に沿って土に直接注ぐのがコツです。注ぎ口の細い水差しを使うと、狙った場所に水を届けやすくなります。
受け皿からの「腰水」で与える方法
上から注ぐのが難しい場合は、土の表面が乾いたときに受け皿に水を入れて、鉢底から吸い上げさせる方法もあります。このときも、吸い上げ終わったら残った水を捨てることが大切です。水を張りっぱなしにすると、根が常に水に浸かって傷んでしまいます。
底面給水鉢の使い方と注意
シクラメンは、鉢の下に水をためるタンクが付いた「底面給水鉢」で売られていることがよくあります。タンクの水を土がひもで吸い上げる仕組みなので、上から水をやる手間が少なく、球根を濡らす心配も減ります。
- タンクの給水口から水を注ぎ、基本的には水がある状態を保つ(受け皿の水を切らさない)
- 水の量は、タンクの5〜8分目くらいを目安にする園芸店の案内もある
- 月に1〜2回は、普通の鉢と同じように土の表面から水を与え、土の中の古い水や肥料分を洗い流す
- うっかりタンクの水を切らして土がカラカラになったら、上から一度たっぷり水を与えてから、またタンクに水を入れる
底面給水鉢は便利ですが、ずっと下から吸い上げるだけだと、土の上のほうに肥料の成分がたまったり、空気が入れ替わりにくくなったりします。時々上から水を通すのは、そのリフレッシュのためです。また、タンクの水が濁ってきたら、捨てて新しい水に入れ替えましょう。
花がら・黄色い葉の取り方と、肥料の与え方
ハサミは使わず「ひねって引き抜く」
咲き終わってしぼんだ花や、色があせた花は、早めに取り除きます。そのままにしておくと、そこからカビが生えて、まわりのツボミや葉まで傷めてしまうことがあるからです。黄色くなった葉や、傷んだ葉も同じように取ります。
取り方には、シクラメンならではのコツがあります。花茎(または葉の柄)の根元を指でつまみ、軽くひねりながら、すっと引き抜くのです。すると、球根の付け根の部分からきれいに外れます。
ここで、ハサミで茎の途中を切ってしまうのは避けましょう。球根の上に残った茎の切れ端が、やがて腐って、そこから病気が広がる原因になるからです。ハサミで根元を切ろうとしても切り口が大きくなり、細菌が入りやすくなるといわれています。少し勇気がいりますが、「ひねって抜く」がいちばん株にやさしい方法です。
花がら取りの手順
- 1.しぼんだ花の茎を、できるだけ球根に近い根元でつまむ
- 2.茎を軽くねじる(くるっと半回転ほど)
- 3.そのまま真上に引き抜く
- 4.途中でちぎれて残ったら、乾いてから同じ要領で取る
- 黄色くなった葉も、同じようにねじって抜く
「葉組み」で株の中心に光を入れる
葉が茂ってくると、株の中心のツボミに光が届きにくくなります。そんなときは、外側の葉を株の外へ広げるように整え、真ん中に光と風が入るようにしてあげます。これを「葉組み」と呼びます。ツボミが顔を出しやすくなり、蒸れの予防にもなります。
肥料は「薄めの液体肥料を定期的に」
シクラメンは花が長く咲き続けるぶん、栄養も必要とします。ただし、買ったばかりの株には、生産者が与えた肥料が土に残っていることが多く、すぐに足す必要はありません。園芸店の案内では、1か月ほどで効果が切れてくるので、葉の色が薄くなってきたら与えはじめる、とされています。
与えるなら、水で薄める液体肥料が扱いやすいでしょう。目安は10日に1回ほどです。薄める倍率は商品によって違うので、袋やラベルに書かれた倍率を守ってください。たとえば、ある液体肥料では普通の鉢で1,000倍、底面給水鉢では3,000倍と、底面給水鉢のほうを薄めにするよう案内されています。タンクの水に肥料分が残り続けるためです。
濃い肥料をたくさん与えれば花が増える、というわけではありません。肥料が多すぎると根が傷み、腐りの原因になります。「少し物足りないかな」くらいの薄さで、こまめに与えるのが安心です。固形の肥料を使う場合は、球根に直接触れないよう、鉢の縁に近い土の上に置きましょう。
ガーデンシクラメンとの違い
ガーデンシクラメンは、鉢花のシクラメンをもとに、屋外でも冬を楽しめるよう寒さに強く改良された小型の品種群です。花も葉もひと回り小さく、寄せ植えや花壇の彩りによく使われます。うっすら雪が積もったくらいでは枯れない、と紹介されることもあります。
一方、室内向けの大きなシクラメンは、花の豪華さを重視して改良されてきたもので、屋外の寒さには向きません。外に出したまま霜に当てると、一晩で傷んでしまうこともあります。
- 室内向けのシクラメン:花も株も大きく華やか。冬は室内の明るい窓辺で育てる
- ガーデンシクラメン:小型で寒さに強い。軒下や花壇など屋外で冬越しできる
とはいえ、ガーデンシクラメンも寒さに無敵というわけではありません。鉢植えなら、雨や霜が直接当たらない軒下に置き、夜に0℃を下回る冷え込みが続くようなら室内に取り込む、という目安を示す園芸店もあります。寒冷地では、冬の最低気温を見ながら判断しましょう。水やりや花がら取りの基本は、室内のシクラメンと同じです。
よくあるトラブルと見分け方
葉がぐったりしている——水切れか、根腐れか
葉や花がぐったりと倒れたとき、まず確かめたいのは土の状態です。原因によって手当てがまったく逆になるからです。
- 土がカラカラで鉢が軽い:水切れの可能性が高い状態です。すぐにたっぷり水を与えましょう。早めに気づけば、数時間から半日ほどで葉が持ち上がってくることが多いです。
- 土が湿っているのにぐったりしている:水のやりすぎで根が傷んでいる(根腐れ)可能性があります。水やりを控え、土の表面がしっかり乾くまで待ちます。球根を押してやわらかくなっていたり、嫌なにおいがしたりする場合は、回復が難しいこともあります。
- 暖房の部屋でぐったりしている:暑さと乾燥で弱っていることがあります。涼しい窓辺へ移してみましょう。
寒い場所から持ち帰った直後や、強い風に当たってしおれた場合は、新聞紙で包んで直射日光の当たらない場所でしばらく休ませると回復することがある、という案内もあります。
ツボミがあるのに咲かない
ツボミが上がってこない、あるいは小さいまま咲かずに止まってしまうときは、次のような原因が考えられます。
- 光が足りない:室内の奥まった場所では日光が不足しがちです。より明るい窓辺へ移しましょう。
- 部屋が暖かすぎる:暖房で株が徒長し、休みに入ろうとしてツボミが育たなくなることがあります。
- 空気が乾きすぎている:暖房で湿度が下がると、ツボミが枯れてしまうことがあります。
- 葉が混み合っている:葉組みをして、株の中心に光を入れましょう。
灰色かび病
花びらやツボミ、若い葉が茶色く変色して腐り、灰色のふわふわしたカビが生える病気です。湿気が多く、空気がこもる環境で発生しやすく、株の中心に水がかかったり、しぼんだ花や枯れ葉を放置したりすると広がりやすくなります。
予防の基本は、ここまでに書いたことの積み重ねです。株の中心に水をかけない、花がらや傷んだ葉はひねって早めに取り除く、葉組みで風通しをよくする。もし発生してしまったら、傷んだ部分を早めに取り除き、ほかの鉢から少し離して様子を見ましょう。広がる場合は、園芸用の薬剤も市販されています。
アブラムシ
ツボミや新しい葉の裏に、小さな虫が群がっていることがあります。見つけたら早めに取り除き、数が多いときは園芸用の殺虫剤を使います。購入時に葉の裏をチェックしておくと、持ち込みを防ぎやすくなります。
春から先——翌年も咲かせたい人へ

春が過ぎて暑くなったら、ボクは眠る準備をするんだ。葉っぱが黄色くなっても、球根が元気なら大丈夫だよ。

えっ、枯れたと思って捨てるところでした。夏を越せばまた咲くんですね。

球根が硬く張りがあれば、来年も咲く可能性があります。ただ手間はかかるので、無理のない範囲で試してみてください。
上手に育てたシクラメンは、3月から4月ごろまで花を咲かせ続けます。気温が上がってくると花数が減り、葉も少しずつ黄色くなっていきます。ここで「枯れた」と思って処分される方も多いのですが、球根が硬く張りがあり、新しい芽が動いていれば、夏を越して秋にまた花を咲かせることもできます。反対に、球根がやわらかく腐っているもの、しぼんでいるものは、夏越しは難しいでしょう。
夏越しの方法は、大きく分けて2つあります。
休眠させる方法(手間が少ない)
花が終わる5〜6月ごろから、少しずつ水やりの回数を減らしていきます。新しい葉が開かなくなったら水やりをやめ、雨の当たらない、風通しのよい日陰で鉢ごと休ませます。8月下旬ごろから少しずつ水やりを再開し、新しい土に植え替えて秋を待ちます。
球根が腐りにくく手間も少ない方法ですが、開花はやや遅れて、翌年の1〜2月ごろになるとされています。
葉を残して夏越しする方法(大きく育つ)
5〜6月にひと回り大きな鉢へ植え替え、水やりを続けながら夏を越させる方法です。梅雨明け後は、直射日光を避けた明るく涼しい場所に置き、30℃を超えないよう工夫します。8月下旬にさらにひと回り大きな鉢へ植え替えます。
株が前の年より大きく育ち、11〜12月ごろに咲くことが期待できますが、夏の暑さで球根が腐りやすく、管理には手間がかかります。風通しのよい涼しい場所を確保できるかどうかが、成否の分かれ目になります。
夏越しのざっくりスケジュール
- 3〜4月:花が続く間は、これまでどおりの管理
- 5〜6月:休眠させるなら水を減らす/葉を残すなら植え替え
- 7〜8月:雨の当たらない涼しい日陰で管理
- 8月下旬:植え替えと水やり再開
- 秋:明るい窓辺に戻し、ツボミが上がるのを待つ
家庭で夏を越させたシクラメンは、お店で並ぶ株ほど葉が詰まって豪華にはならないことがほとんどです。それでも、自分の手で一年をめぐらせた花には、また違ったうれしさがあります。気負わず、「咲いたらうれしい」くらいの気持ちで挑戦してみてください。
シクラメンは、手をかけすぎるよりも、「明るく涼しい場所に置いて、乾いたら鉢の縁から水をやり、しぼんだ花はひねって抜く」という基本を、静かに続けるほど長く咲いてくれる花です。冬の窓辺で、次から次へと立ち上がってくるツボミを見つける時間は、寒い季節のささやかな楽しみになります。
11月に迎えた一鉢が、年を越し、春の光の中でもまだ咲いている。そんな冬の過ごし方を、今年はぜひ味わってみてください。
🛒 シクラメンを春まで咲かせるために
🧪 ハイポネックス原液——水で薄めて使う液体肥料。規定の倍率を守って使いましょう
🚿 小型のジョウロ——細い注ぎ口で、室内の鉢の株元に静かに水をやれます
KIKYOYA FLOWERS
東京・神楽坂の花屋 桔梗屋
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