6月30日は「夏越の祓(なごしのはらえ)」。一年の前半が終わるこの日、半年で身についた穢れや厄を祓い、残り半年の無病息災を祈る神事です。

神楽坂の赤城神社でも毎年、茅の輪くぐりが行われます。お参りに行ったあとに桔梗屋で季節のお花をお迎えする方も多いんですよ。
🌿 茅の輪くぐりとは
神社の境内に設けられた茅(ちがや)で編んだ大きな輪をくぐることで、穢れを祓い、無病息災を祈ります。古事記の「蘇民将来(そみんしょうらい)」の伝説に由来する、奈良時代から続く神事です。
正式なくぐり方は「左・右・左」と8の字に3回くぐります。
🍵 「水無月」を食べる文化
京都を中心に、夏越の祓には「水無月(みなづき)」という和菓子を食べる習慣があります。三角の形は氷を表し、上の小豆は邪気を払う色とされています。冷蔵庫もなかった平安の昔、氷を口にできない庶民が氷に見立てて食べたのが始まり、と伝わります。
🌸 神社と植物の深い縁
- 榊(サカキ):神前に必ず捧げられる神聖な木
- 茅(ちがや):茅の輪・茅葺の材料、浄化の植物
- 麻(あさ):神事の鈴緒や注連縄に使われる
- 桔梗:神紋として多くの神社に。明智光秀や安倍晴明の家紋でも知られる

神社って植物にとってもパワースポット!境内のお参りのときは、ぜひ木や草花にも目を向けてみてね。
🏠 自宅でできる「小さな夏越の祓」
- お部屋を丁寧に掃除する
- 玄関と窓を全開にして空気を入れ替える
- 白いお花(菊・カスミソウ・白バラ)を一輪飾る
- 水無月か氷菓子を食べて、半年お疲れさまの自分を労う
🌾 茅(ちがや)の不思議——「収穫から何時間以内」の謎
茅の輪に使われる「茅(ちがや)」はイネ科の多年草。古来から神事に使われてきた神聖な植物です。実は、神社によっては「茅は当日に収穫したものを使う」という決まりがあるのをご存知ですか?
「収穫から何時間以内じゃないと効果が薄れる」とも言われるこの伝承。科学的根拠は明確ではありませんが、こんな可能性が考えられています。
- 🌿 植物としての「気(き)」が新鮮なうちが強いという信仰
- 💧 葉の中の水分・揮発成分が時間とともに失われる
- 🌬️ 「青み」「香り」が薄れると神聖さも薄れる、という感覚
- 📜 神道の作法として「鮮度=清浄性」とされる

科学的に証明されているわけではありませんが、「新鮮なうちに使う=植物の生命力を借りる」という日本人の感性は、本当に繊細だなと思います。

ぼくたち植物は、切られてもしばらくは生きている。茅の輪も、その「生きている力」を借りて穢れを祓う神事なんだよ!
⛩️ 神社と植物の深いつながり——3つの「神聖植物」
日本の神社には、欠かせない「神聖植物」がいくつもあります。茅、榊、麻——それぞれに深い意味と歴史があります。
🌾 ①「麻(あさ)」——古代日本の「スーパー神聖植物」
神道でもっとも神聖とされる植物のひとつが「麻」。神社の注連縄(しめなわ)・鈴緒(すずお)・お祓いの大麻(おおぬさ)に古来から使われてきました。
📜 古代から「魔除け・清浄」の象徴
- 🪢 注連縄:神域と俗界を分ける結界
- 🔔 鈴緒:神様に祈りを届ける紐
- 🍃 大麻(おおぬさ):神主さんが穢れを祓う祭具
- 👘 麻の着物:神聖な祭事に着用
- 🌿 七夕の短冊もかつては麻の繊維で作られた
麻は成長が早く、葉に独特の波動を持つとされ、「邪気を払う植物の代表格」と古来から信じられてきました。日本の神社の歴史は、麻なしには語れないほどです。

麻ってそんなに大事な植物だったんですね…!

そうなんです。「日本の神事の縁の下の力持ち」が麻。でも現代では、神社用の麻を栽培できる農家さんが本当に少なくなりました。
⚖️ 戦後の変化——大麻取締法と「神事用麻」の現在
1948年、戦後の占領期に施行された「大麻取締法」により、日本の麻栽培は厳しく規制されることになりました。これは戦後の社会変化の一つの結果として、しばしば文化的な議論の対象になります。
- 1948年の規制以前は、麻は日本各地で栽培されていた身近な植物
- 規制後は、神社用の麻を栽培できる農家が激減
- 現在は都道府県知事の許可を得た一部の農家のみが、神事用の麻を生産
- 栃木県の鹿沼などが代表的な産地

神社で使われる麻は、厳密に管理された「神事用の品種(THC含有量が極めて低いもの)」。当然ながら、薬物として規制されているものとは別物です。
「日本古来の文化が一部失われた」と指摘する声もあれば、「世界の流れに合わせた当然の規制」とする見方もあります。歴史をどう捉えるかは、あなた次第。ただ、神社で目にする注連縄や鈴緒のひとつひとつに、長い歴史と現代までの物語が込められていることは、知っておきたい事実です。

麻には「魔除け」「清浄」の意味が古来から託されてきたんだ。神社にお参りしたら、ぜひ注連縄や鈴緒に「ありがとう」と心の中で言ってみてね。
🌳 ②「榊(さかき)」——神前に欠かせない常緑樹、本榊とヒサカキ
もうひとつの神聖植物が「榊(さかき)」。神棚や神事に欠かせない常緑の木で、「栄木(さかき)」とも書かれた、永遠を象徴する植物です。
実は「榊」と一口に言っても、2つの種類があるのをご存知でしょうか?
🌿 本榊(ホンサカキ)
| 学名 | Cleyera japonica |
| 科 | サカキ科(旧ツバキ科) |
| 葉 | 縁が滑らか(鋸歯がない) |
| サイズ | 葉が大きく、艶やか |
| 分布 | 主に関西以西の温暖な地域 |
🌱 ヒサカキ(姫榊/非榊)
| 学名 | Eurya japonica |
| 科 | ペンタフィラクス科(旧ツバキ科) |
| 葉 | 縁にギザギザの鋸歯がある |
| サイズ | 葉が小さめ |
| 分布 | 関東以北で「サカキ」として使用 |

店長、関東と関西で違うものを「サカキ」って呼んでるんですね…!

そうなんです。関東では本榊が育ちにくいので、似たヒサカキを「榊」として神事に使う文化が根付きました。どちらも「本物の神聖植物」として、長く日本人の信仰を支えてきたんです。
🔍 簡単な見分け方
- 葉の縁を見る:滑らか→本榊/ギザギザ→ヒサカキ
- 葉のサイズ:大きい→本榊/小さい→ヒサカキ
- 地域:西日本→本榊が多い/東日本→ヒサカキが多い

神棚にお供えする時、地域によって違う種類が「榊」になってるって面白いよね!どっちもちゃんと神様に届く植物だよ。
🌸 神社と植物——「目に見えない繋がり」を感じる時間
茅・麻・榊。どれも古来からの日本人と神様の「橋渡し役」を果たしてきた植物たちです。夏越の祓で神社にお参りされる時、ぜひ境内のこれらの植物にも目を向けてみてください。

神楽坂エリアの赤城神社でも、夏越の祓と茅の輪くぐりが行われます。お参りのあとに桔梗屋にもお立ち寄りいただいて、清涼感のあるお花を一輪お持ち帰りいただくのも素敵な時間の使い方ですよ。
関連記事もぜひご覧ください:お盆と花屋/旧暦と新暦の歴史/旧暦6月の行事一覧
🌸 桔梗屋からのご案内
東京・神楽坂の花屋・桔梗屋では、季節のお花・観葉植物・ご贈答用アレンジメントを取り扱っています。
暦の節目に合わせた縁起植物も店頭・WEBサイトでご案内しています。
🌺 桔梗屋WEBサイトへ
※本記事は日本の伝統的な暦・季節文化・東洋思想を紹介するもので、特定の効果・効能を保証するものではありません。気軽な暮らしの参考としてお楽しみください。


コメント