今回は「母の日」をテーマにお話をしようかと思います。
2025年5月11日は「母の日」でした。
もうすでに母の日は終わりました。当日までにご注文、ご予約を沢山いただきました。
まだ感謝の気持ちを伝えていない方。
忘れていた方。
忙しくて当日を逃してしまった方。
やばぃ・・・何もしてない!と、焦らないでください。
母の日当日以外、お母さんに感謝しちゃいけない訳じゃありません。
毎年、母の日を過ぎてからご注文を受ける「遅れてごめんね母の日」なんて言ったりするのですが、
私から言わせていただくと、遅れても謝る必要もないし、お母さんに普段なかなか言えない感謝の気持ちを伝えるのはいつもでも良いのではないかと思ってます。
花屋「桔梗屋」としては5月を「母の月」にしたいくらいです(笑)
……とはいえ、この「母の月」という言い方、実は桔梗屋が思いつきで言い出したものではありません。花の生産者さんから市場、そして街の花屋までを含めた業界全体が、数年前から本気で提案してきた考え方でもあります。この記事では、その背景を含めて「母の日」という行事そのものを少し掘り下げながら、5月のうちに花を贈るときの選び方と、贈られた花を長く楽しむための具体的な手入れまで、まとめてお話ししていきます。
そもそも「母の日」は、どこから来た行事なのか
毎年5月の第2日曜日が母の日。これはもう当たり前のこととして暮らしに入り込んでいますが、では「なぜ第2日曜日なのか」「なぜカーネーションなのか」と聞かれると、すぐに答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか。花屋という仕事をしていると、この行事の成り立ちを知っているかどうかで、花の選び方そのものが変わってくる場面があります。少し遠回りに見えますが、まずは由来から順にたどってみます。
一人の娘が、母を偲んで白いカーネーションを配った
現在の母の日のもとになったのは、アメリカのアンナ・ジャービスという女性の行動だとされています。彼女の母親は、南北戦争の時代に敵味方を問わず負傷兵の世話をしたり、地域の衛生状態を良くするための活動をしたりと、社会に向けて働きかけを続けた人でした。その母を亡くしたアンナは、1907年5月12日、母が日曜学校の教師をつとめていた教会で追悼の会を開き、白いカーネーションを捧げます。これが母の日の直接の起源とされています。
翌1908年5月10日には、同じ教会で470人ほどの生徒と母親たちが集まり、あらためて「母の日」を祝う会が開かれました。このときアンナは、参加者全員に白いカーネーションを手渡したと伝えられています。白いカーネーションが選ばれたのは、単純に「亡き母が好きだった花だから」でした。特別な花言葉から逆算して選ばれたわけではなく、一人の娘にとっての、母の思い出の花だったのです。
その後、アンナは母の日を国全体の記念日にするための働きかけを粘り強く続け、1914年、アメリカで5月の第2日曜日が母の日として正式に定められました。私たちが「5月の第2日曜」と何の疑問もなく口にしている日付は、この時に決まったものです。
創始者自身が、商業化に反対したという話
ここからが、あまり知られていない部分です。母の日が記念日として定着していくにつれ、カーネーションやカード、ギフトの商戦が急速に大きくなっていきました。アンナ・ジャービス本人は、この流れを激しく嫌ったと伝えられています。彼女が望んでいたのは、母親に手紙を書いたり、直接会いに行ったりして気持ちを伝えることであって、既製品のカードを買って済ませることではなかったからです。晩年の彼女は母の日の商業化に反対する運動に力を注ぎ、私財を投じて訴え続けたとも言われています。
花を売る側の人間がこの話をするのは、少し複雑な気持ちもあります。ただ、この逸話には大事な芯が入っていると思うのです。つまり「母の日は、日付でも商品でもなく、気持ちを伝えるための機会だった」ということ。だとすれば、5月11日に間に合わなかったからといって、その気持ちが目減りするわけがありません。むしろ、混み合った当日を外して、ゆっくり選んだ花を持っていくほうが、この行事のもともとの姿に近いのかもしれない、とすら思います。
日本にはいつ、どうやって入ってきたのか
日本に母の日が紹介されたのは、明治の終わりから大正にかけての時期とされています。青山学院で教えていたアレクサンダー女史がアメリカの母の日を伝え、キリスト教の関係者を通じて少しずつ広まっていったという流れです。ただし、この段階ではまだ限られた範囲の行事でした。
日付についても、実は紆余曲折があります。1931年(昭和6年)には、当時の大日本連合婦人会が、皇后(香淳皇后)の誕生日である3月6日を「母の日」と定めたことがありました。しかし、これは広くは定着しませんでした。
流れが大きく変わったのは1937年(昭和12年)です。菓子メーカーの森永製菓が大規模な「母の日大会」を開催し、これが新聞などで大きく報じられたことで、母の日という行事そのものが全国的に知られるようになりました。翌1938年には5月の第2日曜日を母の日とする形が整えられ、戦後、アメリカの文化がさらに流れ込むなかで、現在の5月第2日曜という形が完全に定着していきます。
つまり日本の母の日は、輸入された行事が、企業のキャンペーンによって一気に全国区になったという、かなり近代的な成り立ちをしています。「昔から続く伝統行事だから当日でなければいけない」というほど古い決まりごとではない、ということです。ここは、遅れてしまった方にとっては少し気が楽になる話ではないでしょうか。
なぜ「母の月」という考え方が広まったのか
冒頭で「桔梗屋としては5月を母の月にしたいくらい」と書きましたが、この「母の月」という言葉自体は、花の業界のなかですでに使われてきたものです。花の生産・流通・小売・文化の団体が集まった日本花き振興協議会が、5月の1か月間を「母の月」として、母の日に集中する需要を分散させようと発信してきました。農林水産省も、こうした業界の取り組みを後押ししています。
きっかけになったのは、新型コロナウイルスの流行でした。イベントや冠婚葬祭が次々に取りやめになり、花の需要が急激に落ち込んだ時期です。そのうえで母の日当日だけに人が集中すれば、花屋の店頭は密になり、配送も一日に集中してしまう。お客様と店で働く人の安全を守り、配送の混乱を避けるために、5月いっぱいに贈るタイミングを散らしましょう、という呼びかけが「母の月」でした。
一日に集中することの、現実的な無理
感染症の話を抜きにしても、母の日を一日に集中させることには構造的な無理があります。花は工業製品ではありません。畑で咲くタイミングを完全に人間の都合に合わせることはできず、しかも切ってしまえば日ごとに状態が変わっていく生鮮品です。それを、全国の何百万という家庭に、たった一日で届けるのです。
- 生産者は、母の日の一日に合わせて出荷の山を作らなければならず、天候が少しずれるだけで計画が崩れます。
- 市場と配送は、その一日に向けて荷物が極端に膨らみ、通常の何倍もの物量をさばくことになります。
- 花屋は、限られた仕入れのなかから短時間で大量の商品を組み、同じ日にすべてを渡し切らなければなりません。
- そして受け取る側も、同じ日に届いた花を、同じタイミングで一斉に世話することになります。
この山を少しならすだけで、無理が減ります。無理が減るということは、一本一本の花にかけられる手間が増えるということでもあります。当日を外して注文された花のほうが、状態も仕上がりも落ち着いていることは珍しくありません。5月の後半に贈るというのは、我慢の選択ではなく、むしろ合理的な選択でもあるのです。
5月は、花にとってどんな月なのか
もうひとつ、「母の月」を後押しする理由があります。5月という季節そのものが、一年のなかでもとりわけ花の充実する時期だということです。バラは最盛期を迎え、シャクヤクがふっくらとした蕾を上げ、クレマチスやトルコギキョウ、初夏のアジサイまで、選択肢が一気に広がります。香りも豊かになる季節です。
母の日当日は、どうしてもカーネーション中心の品揃えになります。けれども5月の中旬から下旬にかけては、その年の一番良い季節の花が店に並んでいる時期でもあります。「遅れた」のではなく「季節が良くなってから選べた」と考えると、贈る側の気持ちもずいぶん変わってくるのではないでしょうか。
カーネーションの色には、それぞれ意味がある
さて、実際に花を選ぶ段になると、まず迷うのが色です。カーネーションは色数がとても豊富な花で、近年は複色や中間色、フリルの入った品種も増えました。ただ、色には昔から言い伝えられてきた花言葉があり、なかには贈るときに少し気をつけたほうがよいものもあります。あくまで言い伝えの範囲の話ですが、知っておいて損はありません。
- 赤……母の日の定番。「母への愛」「愛情」といった意味が伝えられており、迷ったときに最も選びやすい色です。
- ピンク……「感謝」「あたたかい心」などとされ、赤よりやわらかい印象。年配の方にも合わせやすく、他の花とも喧嘩しません。
- オレンジ……「純粋な愛」「あなたを愛します」など。明るく元気な印象で、ビタミンカラーの花束にまとめやすい色です。
- 白……「亡き母を偲ぶ」という意味が強く残る色です。もともとアンナ・ジャービスが亡き母に捧げたのが白でした。ご健在のお母様への贈り物としては、白一色は避けるのが無難とされています。
- 黄色……「友情」「美」という明るい意味がある一方、「嫉妬」「軽蔑」といった意味も伝えられています。単独で大きく使うより、差し色として少量に留めると安心です。
- 紫……「気品」「誇り」と、大人っぽい魅力のある色。ただし「気まぐれ」という意味も伝えられているため、気になる場合はメッセージカードを一言添えるとよいでしょう。
- 濃い赤(ダークレッド)……「私の心に哀しみを」といった意味が伝えられており、鮮やかな赤とは区別して扱われることがあります。
とはいえ、ここで一番お伝えしたいのは「花言葉に縛られすぎないでください」ということです。花言葉は国や時代によって違いますし、贈られた側がその意味を知っているとも限りません。お母様が黄色い花を心から好きなのであれば、黄色を選んで何の問題もありません。そのときに「お母さんが好きな色だから選んだよ」と一言添えれば、誤解の余地はなくなります。
避けたほうがよい色として本当に気をつけたいのは、白一色の花束くらいです。白は弔いの場面と結びつきやすく、受け取ったお母様が一瞬とまどう可能性があります。白い花を使いたい場合は、ピンクや淡いグリーンと組み合わせて、明るい印象の束にまとめるのがおすすめです。
カーネーション以外という選び方
母の日といえばカーネーション、というのは間違いではありません。ただ、5月の後半に贈るのであれば、あえてカーネーション以外を選ぶ意味がかなり大きくなります。理由は三つあります。
ひとつめは価格です。カーネーションは母の日に需要が集中するため、当日前後は相場が上がります。逆に言えば、時期をずらすと同じ予算でも花のボリュームや品質を上げやすくなります。ふたつめは季節性です。5月中旬以降は、その年の最も良い状態のバラやシャクヤクが出回ります。三つめは日持ちです。気温が上がってくる時期には、花によって持ちの差がはっきり出てきます。
この時期に選びやすい花
参考までに、5月のこの時期に選択肢に入れやすい花をいくつか挙げておきます。実際には入荷状況によって変わりますので、店頭で「今いちばん良いもの」を聞いていただくのが確実です。
- バラ……5月は最盛期です。色も香りも品種の幅が広く、一本だけでも絵になります。花束にすると特別感が出やすい花です。
- シャクヤク……固い蕾の状態で贈れば、家で日ごとに開いていく過程を楽しめます。開いたときのボリュームが圧倒的で、「贈り物らしさ」のある花です。ただし蕾が固すぎると開かないことがあるため、少し色が見えている状態のものを選ぶと安心です。
- トルコギキョウ……日持ちの良さでは非常に優秀な部類です。花持ちを最優先したい相手や、こまめな世話が難しい方に向いています。
- アジサイ(鉢・切り花)……初夏の空気に合う花。鉢物であれば、翌年以降も庭やベランダで楽しめる可能性があります。
- 胡蝶蘭(ミディサイズ)……花持ちが長く、置き場所も取りにくいサイズが選べます。義理のお母様など、少しあらたまった相手にも合わせやすい花です。
- 季節の草花のミックス……特定の花を主役にせず、その日いちばん良いものを束ねてもらう方法。花屋にとっても品質を出しやすく、価格に対する満足度が高くなりやすい選び方です。
花束・アレンジメント・鉢物、どれを選ぶか
形の選び方で迷う方も多いところです。それぞれ性格が違います。
- 花束……渡す瞬間の華やかさが一番あります。ただし受け取った側が花瓶を用意し、水を入れて生ける作業が必要です。花瓶を持っていない方や、高齢で作業がしんどい方には少し負担になります。
- アレンジメント……吸水スポンジに生けてあるため、届いたらそのまま飾れます。手間をかけたくない相手や、遠方への配送に向いています。水を足す手入れは必要です。
- 鉢物……うまく育てば長く楽しめ、翌年また咲くこともあります。ただし「世話をする」という前提が要るので、相手が植物の世話を楽しめる方かどうかで評価が分かれます。
「どれが正解」ということはなく、お母様の暮らしぶりに合わせるのが一番です。ひとり暮らしで留守がちなのか、家にいる時間が長いのか、庭やベランダがあるのか。そこまで伝えていただければ、花屋の側でも提案がしやすくなります。
予算を決めるときの考え方
金額の大小より、「どんな場面で渡すか」から逆算するほうがうまくいきます。手渡しで持ち帰ってもらうなら、片手で持てて電車に乗れる大きさに収めたほうが親切です。配送で届けるなら、玄関で受け取ってそのまま飾れる形のほうが喜ばれます。同じ予算でも、大きさを取るか、花の質を取るか、日持ちを取るかで中身は変わります。ご予算を先に伝えていただいたうえで「この条件で一番良いものを」とお願いするのが、花屋の使い方としては一番効率が良い方法です。
贈られた花を、できるだけ長く楽しんでもらうために
ここからは、贈った先で花を長持ちさせるための具体的な手入れです。贈る方がこれを知っておくと、渡すときに一言添えられます。「水は毎日替えてね」の一言があるかないかで、花の寿命はかなり変わります。
まず「水切り」をする
切り花が水を吸わなくなる一番の原因は、切り口が乾いたり、詰まったりすることです。これを解消するのが水切りという作業です。やり方は難しくありません。
- 洗面器やボウルに水を張り、その水の中で茎の先を切ります。水中で切るのは、切った瞬間に空気が入るのを防ぐためです。
- 切り口は斜めに切ります。断面積が広くなり、水を吸う面が増えます。
- 切れ味の良いハサミやナイフで一気に切ります。何度も刃を入れて茎の組織をつぶすと、かえって水の通りが悪くなります。
この作業は、花を受け取った日に一度やるだけでも効果があります。さらに、水替えのたびに1センチほど切り戻すと、状態を保ちやすくなります。
水に浸かる葉は、すべて取る
花瓶の水が濁って臭くなるのは、水の中で葉が腐り、バクテリア(細菌)が一気に増えるからです。バクテリアが増えると、茎の切り口がぬめり、水を吸い上げる道が詰まります。花が水を吸えなくなり、首が垂れる。この流れです。
対策はごく単純で、水につかる高さの葉は全部むしり取ること。これだけで水の傷み方がまったく違います。葉が多い花は、上のほうの葉も少し減らしておくと、葉から水分が逃げる量が減って花に水が回りやすくなります。
水替えの頻度は、季節で変える
水替えの目安は次のとおりです。
- 冬場……2〜3日に1回でも保ちます。
- 春・秋……1〜2日に1回。
- 気温の高い時期……毎日。真夏の暑い時期は、朝と夕方の2回替えるくらいでちょうどよいこともあります。
5月は日によって気温の差が大きい季節です。急に25度を超える日が出てきますから、「春だから2日に1回」と固定せず、暑い日は毎日替えると考えておくと安心です。
水替えのときは、水を入れ替えるだけでなく花瓶の内側を洗うのが大事です。内側のぬめりにバクテリアが残っていると、新しい水を入れてもすぐに元通りになってしまいます。スポンジや細長いブラシで、内側をこすってから使ってください。
切り花延命剤の使い方
花屋で花を買うと、小さな袋に入った粉や液体が付いてくることがあります。これが切り花延命剤です。中身は主に、花の栄養になる糖分、細菌の繁殖を抑える成分、そして水の吸い上げを助ける成分などです。使うと持ちが良くなりやすいので、付いてきたらぜひ使ってください。
注意点は二つあります。ひとつは濃度を守ること。濃ければ効くというものではなく、規定より濃いとかえって傷むことがあります。もうひとつは、延命剤を入れていても水替えは必要だということです。「入れたから放っておいてよい」ではなく、「水替えの手間を助けてくれるもの」と考えてください。
置き場所で、寿命が変わる
花瓶の水の管理と同じくらい、置き場所が効きます。花を早く傷める条件は、はっきりしています。
- 直射日光……水温が上がり、花が消耗します。明るい日陰が理想です。
- エアコンの風が直接当たる場所……花びらから水分が奪われ、縁から乾いて傷みます。
- 暖房器具・テレビの上など、熱を持つ場所……同じ理由で避けます。
- 果物のそば……熟した果物からはエチレンというガスが出ます。これは植物の老化を促す性質があり、花の咲き進みや散りが早くなることがあります。リンゴやバナナのすぐ横は避けたほうが無難です。
逆に、風通しがよく、涼しく、直射日光の当たらない場所が花には向いています。玄関や北向きの部屋は、意外と花にとって良い環境であることが多いです。夜のあいだだけ涼しい部屋に移すというのも、暑い時期には効果があります。
咲き終わった花は、こまめに外す
花束のなかで、傷んだ花を1本そのままにしておくと、そこから傷みが広がりやすくなります。しおれた花や茶色くなった花びらは、気づいたときに抜き取ってしまってください。全体が締まって見えますし、残った花に養分と水が回ります。
そして、花束の量が減ってきたら、小さな花瓶やコップに移し替えると最後まできれいに見えます。大きな花瓶に少ない花が入っているとどうしても寂しく見えますが、器を小さくするだけで、また整った姿になります。最後の数本になったら、洗面所やキッチンの窓辺に一輪挿しで飾る。そういう終わり方ができると、贈った花が最後まで役目を果たしてくれます。
鉢物のカーネーションが、すぐ弱ってしまうのはなぜか
母の日に鉢植えのカーネーションを贈ったところ、数週間で元気がなくなってしまった。これは非常によくある話です。ただ、これは贈り主の選び方が悪かったわけでも、育てる人が下手だったわけでもありません。カーネーションという植物の性質と、日本の初夏から夏にかけての気候が、そもそも噛み合っていないのです。
高温多湿がとにかく苦手
カーネーションは、日当たりと風通しの良い、乾いた環境を好みます。逆に、高温多湿の状態が続くと株が蒸れて弱ります。そして日本には梅雨があります。母の日に届いた鉢が、そのまま6月の長雨に入ると、たいていの株は蒸れて調子を崩します。しかも母の日向けの鉢は、贈り物として見栄えが良くなるよう、花を密に咲かせた状態で作られています。花が密であればあるほど、風が抜けず、湿気がこもります。
つまり、母の日のカーネーション鉢は「一番美しい状態で届き、そこから条件が悪くなっていく」という宿命を持っています。これを知っているだけで、対処の仕方が変わります。
届いてからやっておきたいこと
- ラッピングを外す……見た目のために鉢がフィルムや紙で包まれていることがあります。そのままだと通気も水はけも悪くなるので、飾って眺めたら早めに外します。鉢底から水が抜けるようにしておくことが大事です。
- 置き場所は、日当たりと風通し……室内で楽しむなら、明るい窓辺で、風の通る場所に。ずっと暗い室内に置くと、茎が間延びして弱ります。
- 雨に当てない……ベランダに出す場合は、屋根のある場所か、雨の日は取り込める場所に。梅雨時の雨ざらしは、株を弱らせる大きな原因です。
- 水やりは、土の表面が乾いてから……常に湿っている状態が一番いけません。表面が乾いたのを確認してから、鉢底から流れ出るまでたっぷりと。受け皿に溜まった水は捨てます。
- 花がら摘みをこまめに……咲き終わってしおれた花は、花首のところでハサミで切り取ります。放っておくと花がらが腐り、そこから病気が出ることがあります。株の養分も無駄になりません。
梅雨に入る前の「切り戻し」
もし来年も咲かせたいと思われるなら、鍵になるのが切り戻しという作業です。ひととおり花が咲き終わった6月の上旬ごろ、思い切って草丈を半分くらいの高さまで切ります。「せっかくの株をこんなに切ってしまってよいのか」と不安になる作業ですが、これをやることで風通しが良くなり、夏の蒸れを乗り切りやすくなります。
あわせて、ひとまわり大きな鉢に新しい土で植え替えてあげると、根も動きやすくなります。母の日の鉢は、贈答用にぎゅっと詰めて作られているため、根が窮屈になっていることが少なくないからです。切り戻しと植え替えをして、夏は涼しく風の通る場所で株を休ませる。そうすると、秋に再びつぼみを付けてくれることがあります。
ただし、必ず翌年も咲くと約束できるものではありません。カーネーションは本来、日本の夏がかなり厳しい植物です。「今年の花をきれいに楽しみきる」ことを第一に考えて、来年も咲いたら嬉しいおまけ、くらいの気持ちで付き合うほうが、贈る側も贈られる側も気楽でいられると思います。
遠方へ贈るとき、当日に渡せないとき
お母様が遠くに住んでいる、仕事が休めない、体調や予定が合わない。花を贈りたいと思っても、当日に手渡しできる人ばかりではありません。ここでは、そういうときの考え方を整理しておきます。
日時は「相手が確実に家にいる日」に合わせる
生花の配送で一番怖いのは、不在で持ち戻りになることです。生の花を積んだ箱が、暖かい配送車のなかで一日余分に過ごすと、状態は確実に落ちます。ですから配送で贈る場合は、記念日の日付にこだわるより、相手が確実に在宅している日時を優先してください。母の日当日は配送の量が最も多く、時間指定も読みにくくなります。この点でも、5月の後半にずらすメリットは大きいと言えます。
「サプライズにしたいので事前に言いたくない」というお気持ちもよく分かります。ただ、生花に関しては、少なくとも「近いうちに荷物が届くから受け取ってね」とだけ伝えておくほうが、結果的にきれいな状態で渡せます。中身は言わなくてよいのです。
遠方には、形と花の種類を合わせる
- アレンジメント……吸水スポンジに生けてあるので、届いたらそのまま飾れます。花瓶を持っていない相手、生ける作業が負担になる相手には、これが一番親切です。
- 鉢物……輸送に強く、届いてすぐ枯れることも少ない選択です。世話を楽しめる方向け。
- 日持ちのする花を選ぶ……輸送で一日消耗する前提なので、もともと花持ちの良い種類を中心に組んでもらうと安心です。
- 蕾の多いものを選ぶ……満開の状態で送ると、到着時にはピークを過ぎています。蕾がしっかりある状態で届けば、相手の家で咲いていく時間を贈ることができます。
一言のメッセージが、いちばん効く
配送で贈る場合、必ずメッセージカードを付けることをおすすめします。理由は二つあって、ひとつは単純に、誰から届いたのかが分かること。もうひとつは、その一行が花そのものより長く残るからです。花はいつか終わりますが、カードは引き出しに取っておかれることがあります。
気の利いた文章である必要はまったくありません。「いつもありがとう」「体に気をつけて」の一行で十分です。むしろ、飾らない短い言葉のほうが、ご本人の言葉として伝わります。母の日を作ったアンナ・ジャービスが望んでいたのも、まさにこういう部分だったのかもしれません。
花屋への頼み方が分からない、という方へ
ここまで選び方や手入れの話をしてきましたが、そもそも「花屋にどう頼んだらいいのか分からない」という声は本当に多いものです。普段なかなか入らないお店ですから、当然だと思います。頼むときに伝えていただきたいことは、実はそれほど多くありません。
- 誰に、どんな場面で渡すのか(母に、自宅で手渡し/遠方へ配送 など)
- ご予算(金額をはっきり言っていただいて大丈夫です。そこから最善を組みます)
- 形の希望(花束かアレンジメントか鉢物か。決まっていなければ「おまかせ」で構いません)
- 色や花の好み・苦手なもの(「ピンク系で」「白は避けて」だけでも十分な情報です)
- 渡す日、または届けたい日時
この5つが分かれば、花屋の側でかなり具体的な提案ができます。花の名前を知らなくても、まったく問題ありません。むしろ「よく分からないので相談したい」と最初に言っていただくほうが、こちらとしても話が早く、良いものを組みやすくなります。
まだお母さんに感謝の気持ちを伝えていない方!
ぜひ伝えてみてはいかがしょうか?
お母さんだって、母の日当日に花が届かなくても嫌な気持ちにならないと思いますよ!!
花屋ってどうやって頼んだらいいのかわからない!という方はこちら。
どやって頼んだらいいのかを解説しております!!
普段なかなか入らない花屋だからこそ、どうやって頼むかわかりませんよね・・・

実際に来店するのも時間無いし・・・
恥ずかしいし・・・
忙しい・・・
という方は花屋「桔梗屋」のオーダーフォームからお申し込みください!
一部地域は直接当店のお花をお届けできかねますが、お客様の代わりに手配いたします。
↓こちらは桔梗屋のご注文フォームです。ぜひご活用いただければと思います。
5月のうちに、一度だけ立ち止まる
母の日という行事は、もとをたどれば、一人の娘が母を思って白いカーネーションを配ったところから始まりました。そこには決まった予算も、決まった商品も、決まった作法もありませんでした。あったのは、伝えたいという気持ちと、その手に持たれた一輪の花だけです。
暦の上の一日は、そのための目印にすぎません。目印を通り過ぎてしまったなら、次の休みの日を自分の母の日にしてしまえばよいのだと思います。5月は、一年でもっとも花の充実する季節です。バラが香り、シャクヤクがほどけるように開き、街の緑が日ごとに濃くなっていく、その一か月のどこかで、花屋の前に一度だけ立ち止まってみてください。
そのとき手に取った花が、当日の花より劣るということは、まずありません。
KIKYOYA FLOWERS
東京・神楽坂の花屋 桔梗屋
季節のお花、観葉植物、贈りもののご相談を承っています。
ご自宅用の一輪から、お祝い・お供えのお花まで、どうぞお気軽に。


コメント