「実家に帰省するけれど、お盆のお花っていつ買えばいいんだろう」——この時期、桔梗屋の店先でいちばん多く聞かれる質問です。
お盆のお花は、年に一度きり。しかも8月は、一年でもっとも花にとって過酷な季節です。買うタイミングを少し間違えるだけで、「お盆の中日にはもう花首が垂れていた」ということが起こります。逆に、ほんの少しコツを知っているだけで、送り火の日まで、きちんときれいなまま供えていられます。
この記事では、2026年の月遅れ盆(8月盆)に向けて、いつ買うか・何を何本買うか・どう運ぶか・予算はどう考えるかを、花屋の実務目線でまとめました。作法の部分は地域やご家庭、菩提寺によって本当に大きく違いますので、「一般にこう言われています」という書き方をしています。最終的には、ご実家のやり方に合わせるのがいちばんです。

お盆の花は「立派なものを買うこと」より「きれいな状態でお供えできること」のほうが、ずっと大事だと思っています。段取りの話が中心になりますが、どうぞお付き合いください。
- 2026年の月遅れ盆は、8月13日(木)〜16日(日)
- 結論:買い時は「8月10日〜12日」。ただし予約は早く
- 早すぎ・遅すぎ、それぞれのデメリット
- 「予約」という、いちばん確実な方法
- 何を、何本買えばいい?——一対と奇数の考え方
- お盆に使われる花——なぜ「暑さに強い花」が選ばれるのか
- 避けたほうがよいと言われる花——ただし「絶対」ではない
- 8月の花は水が下がる——持ち帰りとお墓での暑さ対策
- 帰省先へ花を持っていくときの運び方
- 予算はどう考える?——金額より「幅がある」ことを知っておく
- 2026年お盆・準備スケジュール早見
- 🛒 お盆のお花を、きれいなまま供えるために
- 神楽坂・桔梗屋から
- おわりに——花は、言葉の代わりになる
2026年の月遅れ盆は、8月13日(木)〜16日(日)
まず日程の確認から。2026年(令和8年)の月遅れ盆は、8月13日(木)が迎え盆、8月16日(日)が送り盆です。地域によっては8月13日〜15日の3日間とするところもあります。
- 8月11日(火)……山の日(祝日)※この年は振替休日なし
- 8月12日(水)……お盆前日。仏花の需要がもっとも集中する日のひとつ
- 8月13日(木)……迎え盆(迎え火)
- 8月14日(金)・15日(土)……お盆の中日
- 8月16日(日)……送り盆(送り火)
ここで押さえておきたいのが、東京の多くの地域は7月盆(新盆)だということ。東京都心部・横浜の一部・静岡の一部などでは7月13日〜16日にお盆を行い、それ以外の全国の多くの地域では8月13日〜16日の月遅れ盆が主流です。
つまり、東京で暮らしていて地方のご実家に帰省する方は、「7月にもう終わった気分の東京」から「これからが本番の実家」へ移動することになります。この時差が、うっかり準備が遅れる最大の原因です。カレンダーに印を付けておくくらいでちょうどいいと思います。

そうなんです。東京にいると7月に「お盆ですね」と言われるので、8月がすっかり頭から抜けてしまって……。
お盆そのものの意味や、7月盆・8月盆の背景についてはお盆と花屋——供花・お供え・初盆までで詳しくまとめています。「そもそもお盆って何をする行事だったっけ」という方は、あわせてどうぞ。
結論:買い時は「8月10日〜12日」。ただし予約は早く
先に結論からお伝えします。花屋として現実的にお勧めしたいのは、次の組み合わせです。
- 買う(受け取る)のは、8月10日〜12日ごろ——迎え盆の13日に合わせて、1〜3日前
- 予約は、1〜2週間前まで——8月上旬、できれば7月末〜8月頭のうちに
「買う日」と「頼む日」を分けて考えるのがコツです。花は受け取るのが遅いほど新鮮ですが、頼むのは早いほど確実。この二つは矛盾しません。予約しておいて、受け取りだけ直前にする——これが、繁忙期にいちばん失敗の少ないやり方です。
仏花・盆花の最需要期は8月12日〜16日で、なかでも12日・13日が山になります。全国の花屋・スーパー・お寺や霊園の花店が、同じ数日間に一斉に動くわけです。市場も、この時期は普段とはまるで違う空気になります。

「今年のお盆はこれくらい要りそう」とだけ先に教えていただけると、こちらも仕入れの段階から動けます。お日にちや細かい内容は、後から相談していただいて大丈夫ですよ。
2026年ならではの注意点:8月11日は山の日
2026年は8月11日(火)が山の日で祝日です。振替休日はありません。ここで気をつけたいのが、祝日は花市場が休みになることが多いという点。仕入れのリズムが平常時とずれるため、11日前後の店頭の品揃えは、お店によって差が出やすくなります。
また、8月8日(土)・9日(日)の週末から帰省が始まり、11日の祝日を挟んで移動のピークがやってきます。「祝日前に買っておこう」と考える方が11日より前に集中する年でもあります。ご自身の出発日から逆算して、「移動前に東京で買うのか」「帰省先で買うのか」を先に決めておくと、動きやすくなります。
早すぎ・遅すぎ、それぞれのデメリット
「じゃあ、なぜ10日〜12日なのか」を、両側から見ていきましょう。
早すぎると——お盆の間に傷む
「混むのが嫌だから、8月5日に買っておこう」。気持ちはとてもよく分かります。ただ、8月の花にとって、この1週間は長い。
夏場は水中でバクテリアが繁殖しやすく、茎の導管が詰まって水が上がらなくなります。すると、茎はまだしっかりしているのに花首だけがカクンと折れる、あの現象が起きます。エアコンの風が直接当たる場所、直射日光の当たる窓辺なども、水分の蒸発を早めて花を消耗させます。
そして厄介なのが、いちばん見てほしい13日〜16日に、ちょうど疲れが出るタイミングになりがちだということ。5日に買った花は、13日には「9日目」です。菊のように保ちのよい花なら耐えることもありますが、一緒に入っている脇役の花が先に落ちていきます。
どうしても早めに買う必要がある場合は、涼しい場所で水を毎日替え、茎を少しずつ切り戻して待機させてください。詳しい方法は切り花を長持ちさせる方法まとめにまとめています。夏は「水を替える」より「茎を切る」ほうが効きます。
遅すぎると——品薄・高値・選べない
逆に、13日の朝に「さあ買おう」と出かけると、こちらもなかなか厳しい。
- 品薄……仏花向きの花は12日〜13日で一気に出ていきます。「白い菊がもうない」「一対そろわない」ということが普通に起こります
- 高値になりやすい……需要が集中する時期は、市場の相場そのものが上がります。花屋が意地悪をしているわけではなく、仕入れ値が動いています
- 選べない……残っているものから選ぶことになり、「実家の仏壇に合う色」「祖母が好きだった花」といった希望を通しにくくなります
- お店が閉まっている……お盆期間中は営業時間を変える店、休む店もあります
とくに「一対(2束)そろえたい」方は、遅いと本当に困ります。左右で見た目のそろった2束を作るには、同じ花が同じだけ必要だからです。片方だけ花が違う、という状態は避けたいところ。

「一対でお願いします」って直前に言われると、正直ひやっとします。逆に先に言っておいてもらえれば、ちゃんと数を確保しておけるんですよね。
「予約」という、いちばん確実な方法
結局のところ、お盆の花でもっとも確実なのは予約です。繁忙期に希望どおりの花束を用意したいなら、2週間前、遅くとも1週間前には声をかけておくとよい、と一般に言われます。お盆であれば、8月上旬までには、ということになります。
予約のときに伝えるとスムーズなこと
- 受け取りたい日と時間帯(「12日の夕方」など、できるだけ具体的に)
- 一対か、一束か(お仏壇用か、お墓用か、両方か)
- 飾る場所(仏壇の花立て/墓前の花筒/精霊棚など。高さの目安が変わります)
- 色の希望(白のみ、白+淡い色、故人が好きだった色 など)
- 使ってほしくない花があるか(ご家庭やお寺の考え方がある場合)
- 持ち帰りの方法(徒歩/電車/車/新幹線で何時間 など)
最後の「持ち帰りの方法」は、意外と見落とされがちですが、花屋にとってはとても重要な情報です。3時間新幹線に乗ると分かっていれば、水の持たせ方も、束ね方も、包み方も変えられます。むしろ、そこを言っていただけないほうが困ります。
「よく分からないので、おまかせで」も立派な注文
お盆の花を買うのが初めて、という方も多いと思います。そういうときは、無理に用語をそろえなくて大丈夫です。「実家のお盆に持っていく仏花を、一対でお願いします。予算はこれくらいで」——これだけで、花屋はきちんと動けます。
何を、何本買えばいい?——一対と奇数の考え方
ここからは「量」の話です。ただし最初にお断りしておくと、この部分こそ、地域・宗派・お寺・ご家庭によって考え方が大きく異なります。以下は「一般によく言われていること」であり、正解はひとつではありません。
仏花は「一対(2束)」が基本とされる
お仏壇には左右に花立てがあり、そこへ左右対称に同じ花束を供える「一対(いっつい)」が基本の形とされています。お墓の花筒も、左右2本あるのが一般的です。
ですので、「仏花をください」=2束と考えておくと、数の計算がしやすくなります。お仏壇とお墓の両方に供えるなら、単純に4束です。ご親戚の家にも寄る、お寺にも、となると、必要数はさらに増えます。「何束いるか」を先に紙に書き出すだけで、当日の慌てぶりがだいぶ変わります。
ただし、住宅事情でお仏壇のスペースが限られる場合、片側だけにする形も一般的です。「一対でなければいけない」と思い詰める必要はありません。
本数は奇数がよいとされる理由
一束に入れる花の本数は、3本・5本・7本といった奇数がよいとされることが多いです。理由としてよく語られるのは、「奇数は割り切れない数だから、ご先祖様とのご縁が切れないように」という考え方です。
実務的にも、奇数のほうが束ねやすいという事情があります。3本なら三角形、5本ならひし形と、中心が決まって形がまとまりやすいのです。偶数だと左右に割れて、真ん中が空きやすい。花屋が「奇数がきれい」と言うとき、半分は縁起の話で、半分は造形の話をしています。

数を数えるより、手を合わせる気持ちのほうが届くと思うけどな……。まあ、きれいな形のほうが嬉しいのはたしかだけど。
結局いちばん確かなのは「実家のやり方に合わせる」
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
お盆の作法は、菩提寺の宗派、その土地の慣習、そしてご家庭の「うちのやり方」という三層で決まっています。インターネットに書かれている一般論より、お母さまやお祖母さまが毎年やってきた形のほうが、そのご家庭にとってはずっと正しい。
帰省前に電話一本で、こう聞いてみてください。
- 「お花、いくつ持っていけばいい?」
- 「いつも仏壇とお墓、両方に供えてる?」
- 「うちで使わない花ってある?」
- 「お寺さんに何か決まりある?」
この4つを聞いておけば、まず外しません。そして何より、その電話自体が、お盆の準備としてとてもいい時間になります。「今年は花を持っていくから」という一言を、ご家族はきっと喜ばれると思います。
お盆に使われる花——なぜ「暑さに強い花」が選ばれるのか
お盆の花に登場する顔ぶれには、ちゃんと理由があります。信仰上の意味を持つ花もあれば、単純に「8月の日本で保つから」選ばれてきた花もあります。
菊——強さが選ばれた理由
仏花の代表格。「仏事の花だから」と思われがちですが、花屋の目から見ると、菊はまず圧倒的にタフな花です。暑さに強く、水も比較的よく上がり、花弁が散りにくい。輪菊、小菊、スプレーマムなど種類も豊富で、形も作りやすい。
供花に菊が定着したのは、格式の問題だけでなく、お盆・お彼岸という「暑さ寒さの厳しい時期」に、いちばん長く咲いていてくれる花だったからという側面が大きいと私は思っています。実利と祈りが、きれいに重なった花です。
りんどう——上を向いて咲く花
お盆から秋にかけての定番。紫や青の縦のラインが、仏花の姿を引き締めてくれます。花が上を向いて咲くことから縁起がよい花とされるという説明もよく聞かれます。日持ちもよく、8月の花束にありがたい存在です。
ケイトウ(鶏頭)——万葉集にも登場する古い花
あの独特のビロードのような質感の花。日本では古くから親しまれ、万葉集にも詠まれた歴史のある植物で、仏事に長く使われてきました。夏の暑さのなかで色があせにくく、乾いても形が残るのが特徴です。赤やオレンジの深い色は、白い菊の隣に置くと驚くほど品よく収まります。
みそはぎ(禊萩)——お盆のためにあるような花
「盆花」「精霊花」という別名を持つ、お盆と最も深く結びついた植物です。漢字で「禊萩」。禊(みそぎ)とは水で身を清めること。別名を「ミズカケバナ(水掛花)」とも言い、精霊棚に供えた閼伽水(あかみず)に浸して、ナスやキュウリを刻んだ「水の子」などのお供えに露を振りかける——そんな役割を担ってきました。
ご先祖様はこの花の露しか口にされない、という言い伝えもあるそうです。細い茎に小さな紅紫の花を穂状につける、決して派手ではない花ですが、由来を知って見ると、ずいぶん違って見えてきます。
ほおずき(鬼灯)——帰り道を照らす提灯
あのオレンジ色の袋を、提灯(ちょうちん)に見立てたのがほおずきです。お盆に帰ってこられるご先祖様が道に迷わないよう、灯りとして飾る。精霊棚に吊るしたり、枝もののように立てて飾ったりします。
みそはぎやほおずきの飾り方、精霊馬(きゅうりの馬・なすの牛)などお盆飾り全体については迎え盆——お盆飾りの意味、精霊馬・鬼灯・みそはぎで詳しく書いています。
そのほか、夏に強い花
- トルコキキョウ……暑さに強く花もちがよい。白や淡紫は仏花にとてもよく合います
- カーネーション……花弁が傷つきにくく、水持ちも良好。色数が豊富です
- グラジオラス……縦のラインが出るので、墓前の大きな花筒に映えます
- スターチス・千日紅……乾きに強く、最後まで色が残ってくれる名脇役
- 百合……華やかですが、香りの強い品種は避ける考え方もあります(後述)
なお、お盆といえば蓮(ハス)の姿も浮かびますが、切り花としての蓮は流通期間が短く、扱いにも少しコツが要ります。蓮(ハス)とスイレンの違い、お盆の切り花で、その辺りをまとめています。
避けたほうがよいと言われる花——ただし「絶対」ではない
仏花について調べると、必ず「タブーな花」の話が出てきます。よく挙げられるのは次のようなものです。
- とげのある花(バラ、アザミなど)……血や殺生を連想させる、供える人が手を傷つける、という理由
- つる性の花(クレマチスなど)……「絡みつく」印象を避ける、という考え方
- 香りが強すぎる花(カサブランカ、キンモクセイなど)……お線香の香りの妨げになる、という理由
- 毒のある花(彼岸花、水仙、スズランなど)……「毒を供える」形を避ける、という考え方
- 花ごと落ちる花(椿、山茶花など)……散り方が不吉とされることがある
ただ、ここは強く申し上げておきたいのですが、これらは「絶対にいけない」という決まりではありません。地域やご家庭、宗派によって受け止め方は本当にさまざまで、「故人が好きだった花なら何でもよい」とはっきり言われるお寺もあります。実際、バラを供えるご家庭も、故人が育てていた花をそのまま供えるご家庭も、たくさんあります。

「これはタブーだから」と言い切るのは、花屋の仕事ではないと思っています。ご家庭の考え方をうかがって、そこに合わせる。迷われているなら、無難な形をご提案する。それだけです。
ひとつ実務的な補足を。とげのある花・香りの強い花については、「宗教的にどうか」以前に現実的な理由もあります。とげは、お墓を掃除して花を挿すときに手を切りやすい。強い香りは、暑さでこもると重く感じられることがある。真夏の屋外という条件を考えると、避けるのに一定の合理性はあります。
8月の花は水が下がる——持ち帰りとお墓での暑さ対策
ここからが、この記事のいちばん実用的な部分かもしれません。8月の花で失敗する原因は、作法ではなくほぼ「熱」です。
なぜ夏は水が下がるのか
切り花は、茎の導管を通して水を吸い上げています。ところが夏は、
- 水温が上がり、水中のバクテリアが一気に増える
- そのバクテリアや空気が導管を塞ぐ
- 吸い上げが止まる一方、葉からの蒸散は暑さで加速する
- 差し引きで水分が足りなくなり、花首から垂れる
という順序で弱っていきます。「水が下がる」とは、吸う量より失う量が上回った状態のこと。対策は、この式の両側から手を打つことになります。
持ち帰りのとき
- 買い物の最後に花屋へ寄る……これが最大のコツです。花を持って他の店を回らない
- 「保水」をお願いする……茎の先を水を含ませた脱脂綿などで包む処理です。夏場は必ず頼んでください
- 直射日光に当てない……包装紙の中は、日なたに数分置くだけでかなりの温度になります
- 横にしたまま長時間放置しない……茎が曲がるだけでなく、花首に無理がかかります
車で運ぶとき——いちばんの落とし穴
声を大にしてお伝えしたいのが、「花をトランクに入れない」「車内に置いて離れない」の二つです。
真夏の閉め切った車内やトランクは、外気温をはるかに超える高温になります。そこに10分置いただけで、花は決定的なダメージを受けます。実際、「お墓に着いたら、もうぐったりしていた」というご相談の大半は、車内放置が原因です。
- エアコンの効いた車室内に置く。ただし送風口の真正面は避ける(乾きます)
- 倒れないよう、段ボール箱やバケツに立てて、助手席や後部座席の足元に固定する
- 途中でどこかに立ち寄るなら、花も一緒に降ろす。面倒でもこれが確実です
- 保冷剤を使うなら、花に直接当てない。タオルなどを挟んで、周囲を冷やすイメージで
お墓に供えるとき
- 花筒の水を必ず入れ替える……古い水が残っていると、その時点で傷んでいます。洗ってから新しい水を
- 供える直前に茎を切り戻す……水中で斜めに切る「水切り」ができれば理想的ですが、屋外では難しいこともあります。それでも、切りたての断面にするだけで吸水がまるで違います。小さなハサミを一本持っていくと重宝します
- 水に浸かる部分の葉は取り除く……水中の葉は腐ってバクテリアの温床になります
- 茎の長さを花筒に合わせる……長すぎると風で倒れます。夏の夕立や台風を考えると、低めに収めるほうが安心です

ハサミ、考えたこともありませんでした。お墓に着いてから茎を切るという発想がなかったです。
お仏壇に供えるとき
屋内でも油断は禁物です。夏の室内、とくに日中に人がいない家の仏間は、かなりの高温になります。
- 水は毎日替える……夏は一日で濁ります。「替える」より「洗って替える」
- ぬめりを洗い流す……花立ての内側のぬめりが、バクテリアの正体です
- 二日に一度、茎を少し切る……1cmでも効果があります
- お線香の熱に近づけすぎない
この辺りの基本は、切り花を長持ちさせる方法まとめと共通です。仏花だからといって、特別なことをする必要はありません。「涼しく、水をきれいに、茎を切る」——この三つだけです。
帰省先へ花を持っていくときの運び方
「東京で買って、実家へ持っていきたい」。これも、この時期よくいただくご相談です。結論から言うと、移動時間が2〜3時間程度までなら、十分に可能です。
新幹線・電車で持っていく
- 花屋に「新幹線で〇時間」と伝える……保水をしっかりして、縦長でコンパクトにまとめてもらえます
- 立てて持てる形にしてもらう……横倒しは、揺れのなかで花が擦れて傷みます
- 網棚には載せない……車内の上部は温度が高く、揺れも大きい。足元に立てるのが安全です
- 混雑時間帯を避ける……お盆の帰省ラッシュで花束を守り抜くのは、正直かなり大変です。可能なら指定席を取り、時間をずらしてください
- 紙袋より、底のしっかりした手提げ……保水の水がにじむこともあるので、防水性のある袋があると安心です
そして、駅に着いたらまず、実家で水に浸ける。到着後すぐに茎を切り戻して深めの水に浸けておくと、旅の疲れからかなり回復します。
もうひとつの選択肢——「帰省先で買う」
正直に申し上げると、移動が4時間を超えるような場合は、帰省先で買うほうが花にとってはずっと優しいです。真夏の長距離移動は、どんなに丁寧に扱っても花を消耗させます。
その場合も、帰省先のお店に事前に電話を一本入れておくのがお勧めです。「〇日の午前に、仏花を一対受け取りたいのですが」——それだけで、ずいぶん確実になります。地方のお店ほど、お盆の需要は集中しますから。
あるいは、東京から配送するという手もあります。この場合は、お盆の配送が大変混み合うことを見込んで、余裕を持って手配してください。お届け日を12日ごろに指定するのが一般的です。

「持っていく派」か「向こうで買う派」か。移動時間で決めるのが、いちばん分かりやすいと思います。
予算はどう考える?——金額より「幅がある」ことを知っておく
「いくらぐらい用意すればいいですか」。これも本当によく聞かれるのですが、正直なところ、金額を一つに言い切ることはできません。
理由は単純で、次の要素で大きく変わるからです。
- 地域……都市部と地方、また地域ごとの慣習で、仏花の標準的な大きさそのものが違います
- 用途……お仏壇用の小ぶりなものと、墓前用の大きなものでは規模が違います
- 数……一束か一対か、供える場所がいくつあるか
- 花の内容……菊主体か、百合など単価の高い花を入れるか
- その年の相場……天候不順で高騰する年もあります。猛暑や台風の影響を受けやすい花です
- 時期……需要が集中する12日〜13日は、相場が上がりやすくなります
ですので、お勧めしたいのは「金額を先に決めて、それを花屋に伝える」という進め方です。
「一対でこのくらいの予算でお願いします」と言っていただければ、花屋はその範囲でいちばんよい形を組みます。予算を伝えるのは、失礼でも何でもありません。むしろ、こちらとしては非常にありがたい情報です。何も分からないまま高いものを出してしまうより、ずっといい。

予算を言いにくいと感じる方が多いようですが、遠慮なさらないでください。この金額で、と決めていただいたほうが、こちらもいい仕事ができます。
もうひとつ。ご実家に「いつもいくらぐらいのものを供えているか」を聞いておくのも、とても有効です。ご家庭には、その家なりの標準があります。それより極端に立派でも、極端に小さくても、なんとなく落ち着かないもの。合わせるのがいちばんです。
2026年お盆・準備スケジュール早見
ここまでの内容を、時間の流れでまとめます。
- 〜8月上旬……ご実家に電話。数・作法・予算を確認。帰省日程を確定
- 8月上旬(1〜2週間前)……花屋に予約。受け取り日・一対か・持ち帰り方法を伝える
- 8月10日(月)〜12日(水)……受け取り。保水をお願いする。ここが買い時の中心
- 8月11日(火)……山の日。市場休みの影響で品揃えに差が出ることも
- 8月12日(水)……お盆前日。仏花需要のピーク。前日までに供える地域も多い
- 8月13日(木)……迎え盆。お墓・お仏壇へ。花筒の水を替えて、茎を切り戻して供える
- 8月14日(金)・15日(土)……中日。仏壇の花は毎日水替え。屋外の花は必要に応じて手直し
- 8月16日(日)……送り盆。最後まできれいに保てていたら、大成功です
お盆が終わったあとのお花の片づけ方は、地域やお寺によって異なります。ご実家のやり方に従うのがいちばんですが、迷われる場合はお盆と花屋——供花・お供え・初盆までもご参考になさってください。
🛒 お盆のお花を、きれいなまま供えるために
✂️ 坂源 ハンドクリエーション(花鋏)——お墓で切り戻すのに一本あると安心です
💧 クリザール フラワーフード——水を替えるたびに入れ直すと、もちが変わります
🌱 ハイポネックス 水あげ名人——しおれてしまった切り花の応急処置に
神楽坂・桔梗屋から
桔梗屋は東京・神楽坂の花屋です。東京の多くの地域は7月盆ですが、8月盆に向けて帰省される方のご相談を、毎年たくさんいただきます。
- 当日、店頭でお選びいただけます……「明日出発するのに何も用意していない」という方も、まずはお声かけください
- ご予約も承ります……日にちと本数だけでも先にいただけると確実です
- 持ち帰りに合わせた仕立てをします……新幹線で何時間、車で何時間、とお伝えください。保水も束ね方も変えます
- ご相談だけでも大丈夫です……「うちの実家、こういう感じなんですけど」から始めていただいて構いません

作法が分からないことを、恥ずかしがらないでください。年に一度のことですし、地域で全然違うんです。私たちも「その地域ではそうなんですね」と教わりながら仕事をしています。
おわりに——花は、言葉の代わりになる
お盆の花について、ずいぶん細かいことを書いてきました。買い時、本数、暑さ対策、運び方。読み返すと、ずいぶん実務的な記事だなと思います。
でも、こうした段取りをきちんとしておく理由は、ひとつしかありません。お墓の前や仏壇の前に立ったとき、花のことを心配せずにいられるように、です。
手を合わせるあのわずかな時間に、「しまった、花が枯れている」と気を取られるのは、もったいない。段取りは、その数分を守るためのものです。
菊が仏花の主役になったのは、暑さに耐えて散らないからでした。みそはぎが盆花と呼ばれるのは、水を掛けて清める役目を担ったからでした。ほおずきが飾られるのは、帰り道の灯りだからでした。お盆の花には、どれも「相手のため」という理由がついています。植物のことを長く見てきて、私はこの点にいつも感じ入ります。人は、伝えたいことがあるとき、花を選んできたのだなと。
今年のお盆、ご実家に何を持っていこうか迷っておられるなら。まずは電話を一本かけて、「花、いくつ要る?」と聞いてみてください。準備は、そこから始まります。
ご相談は、神楽坂の桔梗屋へ。店頭でも、お電話でも、お待ちしています。

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