2025年の1月に「コチョウランを水耕栽培で育ててみます」という記事を書いたきり、その後のご報告をしないままになっていました。あの記事の最後に「開花の状態をお知らせします」と書いておきながら、咲いた様子をアップできていなかったのです。読んでくださっていた方、申し訳ありません。
この記事では、店長が実際に水耕で育てているコチョウランの2025年11月時点の様子をご紹介しつつ、「そもそもコチョウランの水耕栽培って何なのか」「自分でもやってみたい人は何から始めればいいのか」を、できるだけていねいにまとめました。
コチョウランは「もらったけれど、この先どうしたらいいか分からない」植物の代表格です。豪華で、高価で、なんとなく難しそう。でも実は、性質さえ分かってしまえば、水やりの手間はむしろ少ない植物です。この記事を読み終わるころには、お手元のコチョウランの根を、ちょっと覗いてみたくなるはずです。

お祝いでいただいた胡蝶蘭、花が終わってから何もしてなくて……。水耕栽培ってどういうことですか?

鉢から出して、水苔もバークも使わずに、器と水だけで育てるやり方です。うちでは2025年の1月から続けています。
むずかしそうに見えて、実は「根が見える」ぶん、やさしいんですよ。
そもそも、コチョウランの「水耕栽培」って何をすること?
最初の記事はこちらです。→ 胡蝶蘭(こちょうらん)の水耕栽培???(2025年1月の記事です)
あらためて簡単に説明すると、コチョウランの水耕栽培とは、鉢と植え込み材(水苔やバーク)を使わずに、透明な器などに株を置き、水だけで育てる方法のことです。ハイドロカルチャーのように石を使う場合もありますが、店長がやっているのは、器に少しだけ水を張って、根を半分ほど遊ばせておく、いちばんシンプルな形です。
水苔植え・バーク植えとの違い
お店やギフトで見かけるコチョウランは、ほとんどが水苔かバーク(樹皮のチップ)に植えられています。どちらも「土」ではありません。ここがまず、多くの方が誤解しているポイントです。コチョウランに一般的な観葉植物用の培養土を使うのは、基本的に向いていないと言われています。
- 水苔……保水力が高く、乾き具合が見た目で分かりやすい。素焼き鉢と組み合わせると通気性がよく、初心者向きとされます。
- バーク(樹皮チップ)……粒が粗く、隙間が多いので根が呼吸しやすい。乾きやすいぶん水やり間隔は長め。プラスチック鉢と合わせることが多い。
- 水耕……植え込み材そのものを使わない。根がむき出しなので、状態がひと目で分かる。水の量を自分で決められる。
つまり水苔もバークも、役割は「根を支える」ことと「湿り気を保つ」ことであって、土のように栄養を与えるためのものではありません。であれば、支えと湿り気さえ別の方法で確保できるなら、植え込み材はなくても成立する——これが水耕という発想の出発点です。
「水耕」といっても、根を水に沈めっぱなしにはしない
ここを勘違いすると、ほぼ確実に失敗します。コチョウランの水耕は、根をすべて水に浸けることではありません。器の底に浅く水を張り、根の一部だけが水に触れている状態を作ります。残りの根は空気中に出したままにしておく。この「半分水、半分空気」が肝心です。
理由は次の章でお話ししますが、ひとことで言えば、コチョウランの根は水を吸うと同時に呼吸もしているからです。全部沈めてしまうと、呼吸ができずに傷んでしまいます。

水耕なのに、水に浸けきらないの……? ややこしいなあ。

そう、そこが胡蝶蘭のおもしろいところなんです。理由を知ると納得しますよ。
なぜコチョウランは水耕に向いているのか——「土に生えない植物」だから
コチョウランは「着生ラン」です
コチョウラン(学名 Phalaenopsis、ファレノプシス)は、東南アジアの熱帯・亜熱帯を原産とするランの仲間です。自生地での姿は、鉢に収まって花屋に並んでいるときの印象とはずいぶん違います。コチョウランは着生ラン——つまり、樹木の幹や枝、あるいは岩肌に根を巻きつけて暮らしている植物なのです。
地面に根を下ろしていない。土から養分を吸っていない。では何を頼りに生きているかというと、雨、霧、樹皮に溜まったわずかな有機物、そして空気中の湿気です。スコールが来れば根はずぶ濡れになり、雨が上がって風が吹けば、数時間で乾く。この「濡れる/乾く」がくり返される環境で進化してきた植物です。
この生い立ちを知ると、コチョウランの扱いにくさの理由がぱっと腑に落ちます。ずっと湿っているのが苦手なのは、自生地でそんな状態が続くことがないから。根が鉢からはみ出してくるのは、異常でも病気でもなく、本来そうやって空気中に根を伸ばして暮らしていた名残なのです。
根の表面をおおう「ベラーメン」という組織
コチョウランの根が白っぽくてぷっくりしているのは、ベラーメンと呼ばれるスポンジ状の組織が表面を覆っているためです。ベラーメンは、雨が降ったときに水を一気に吸い込んで蓄え、乾いているあいだは内側の細い根を守る、いわば保水と保護を兼ねたコートのようなものです。
このベラーメン、乾いているときは白〜銀白色に見え、水を含むと透けて内側の緑が見えるようになります。つまりコチョウランの根は、乾湿の状態を色で教えてくれるということ。これは水耕栽培にとって、とても大きな利点です。土に埋まっていたら見えないものが、透明な器の中では丸見えになるのですから。
だから「水耕が向く」と言えるのです
- もともと土に生えていない植物なので、植え込み材を外しても生き方が大きく変わらない
- 根は空気に触れているのが自然な状態。むき出しでも問題が起きにくい
- 水を含むと緑、乾くと銀白色——根の色で水加減が判断できる
- 透明容器なら、根腐れの初期サインにも早く気づける
- 水苔の劣化や、鉢の中でこもった蒸れを心配しなくていい
もちろん、水耕が唯一の正解というわけではありません。水苔やバークで見事に咲かせている方もたくさんいらっしゃいます。ただ、「植え替えが苦手」「水やりのタイミングが分からない」という方にとって、根が見える水耕は、かなり相性のいい方法だと思います。
根を見れば、だいたい分かる——健康な根と傷んだ根
水耕栽培の一番の楽しみであり、一番の武器が「根が見えること」です。ここでは、見分け方をまとめておきます。
健康な根
- 緑色……水をたっぷり含んでいる状態。水やり直後や、湿り気があるときの色です。
- 白〜銀白色……ベラーメンが乾いている状態。これは不健康ではなく、「そろそろ水がほしい」というサインと考えられています。
- 触るとぷっくりと張りがあり、押してもつぶれない
- 先端に、つやのある黄緑〜赤紫の伸長点(生長点)が見える。ここが伸びていれば元気に育っている証拠です。
緑と銀白色を行き来しているなら、水の管理はうまくいっていると考えていいでしょう。逆にいつまでも緑のままなら、水が多すぎるか乾く時間が足りていない可能性があります。
傷んだ根
- 茶色〜黒っぽい……根腐れが進んでいるサインとされます。ただし品種によっては元から褐色がかった根を持つものもあるので、買ったときの色を覚えておくと判断しやすくなります。
- しわしわ・スカスカ……中身がなくなり、指でつまむと外皮だけが残る。完全に機能を失っています。
- ぬめり、あるいは押すとぐにゃりと潰れる
- いやなにおいがする
傷んだ根は、放っておくと隣の根へ広がっていくことがあります。見つけたら、清潔なはさみで切り取るのが基本です。ただし——ここは大事なところですが——切りすぎないこと。詳しくは「失敗しやすいポイント」の章でお話しします。
ついでに:根と花芽の見分け方
株元から新しいものが出てくると、「これは根? それとも花芽?」と迷います。おおまかな目安はこうです。
- 根……先端が丸く、つるんとしている。伸びる方向は下向きや横向きが多い。
- 花芽(花茎)……先端がややとがっていて、平たい。上に向かって伸びていく。表面に節が見える。
見分けがつかないうちは、そっとしておくのが一番です。数週間もすれば、進む方向がはっきりしてきます。

根っこの色が銀色になってて、枯れたかと思ってました!

よくある勘違いです。乾いてるだけですよ。水をあげると、すーっと緑に戻ります。
水耕への切り替え手順
「うちのコチョウランもやってみたい」という方のために、切り替えの流れをまとめます。作業自体は30分ほどですが、株にとっては大きな環境の変化ですから、時期と手つきを大事にしてください。
いつやるのがいいか
植え替えの適期は、一般に4月〜6月ごろと言われています。花が終わり、これから生育期に入る手前のタイミングです。この時期なら、多少根を傷めても回復する力があります。
逆に、真夏の高温期と真冬の低温期は避けたほうが無難です。とくに冬は、株の回復力が落ちているうえに、根を濡らしたまま寒さにさらすことになりかねません。花が咲いている最中も、花を早く終わらせてしまう可能性があるので、できれば見送ります。
用意するもの
- 透明な器(ガラスの花器、保存瓶、コップなど。株が安定して立つサイズ)
- はさみ(清潔なもの。火で炙るかアルコールで拭いて消毒しておくと安心)
- 新聞紙かレジャーシート(作業台の汚れ防止)
- 常温の水
手順
- 1. 鉢から株を抜く……鉢のふちを軽く揉んでゆるめ、株元を持って静かに引き抜きます。急がないこと。根が鉢に張りついているときは、鉢を切ってしまうほうが根を守れます。
- 2. 植え込み材を落とす……水苔やバークを、根をほどきながら少しずつ外していきます。かたまりになっている部分は、水にしばらく浸けるとゆるみます。ピンセットがあると細かいところが楽です。
- 3. 根を洗う……常温の水で、根の表面をやさしくすすぎます。ゴシゴシこすらないこと。ベラーメンは意外とデリケートです。
- 4. 傷んだ根を整理する……茶色くスカスカになった根、ぬめりのある根を、消毒したはさみで切り取ります。健康な根(緑・白でぷっくりしたもの)は絶対に残してください。
- 5. しばらく乾かす……切り口が乾くまで、風通しのよい日陰で数時間〜半日ほど置きます。濡れた切り口をすぐ水に触れさせると、そこから傷みが入ることがあります。
- 6. 器に据える……根を器の中に収め、株元(葉の付け根)が水に浸からない高さで安定させます。器が大きすぎて安定しないときは、ガラス玉やハイドロボールで支えを作ってもかまいません。
切り替えた直後の管理
植え替え直後は、いきなり通常の水やりに戻さないほうがよいとされています。傷ついた根に水が当たると、そこから傷みが広がることがあるためです。一般には、1週間ほどは水を控えめにし、2週間ほどかけて通常の管理に戻していくとよいと言われています。
この期間は、直射日光の当たらない明るい場所に置き、葉から水分が逃げすぎないよう、霧吹きで葉水を与えるくらいがちょうどいいでしょう。

最初の2週間は、なにもしないくらいの気持ちで見守ってあげてください。心配で触りすぎるのが、いちばんよくないんです。
水の量と、替え方
なぜ根を全部浸けないのか
くり返しになりますが、コチョウランの根は呼吸をしています。水中に沈めっぱなしにすると、根の周りの酸素がなくなり、やがて腐り始めます。水耕栽培でよくある失敗の筆頭が、この「水の入れすぎ」です。
目安として、器の底に1cm前後。根の下のほうが触れる程度で十分です。「少ないかな」と感じるくらいでちょうどいい、と覚えてください。上のほうの根は空気中に出したままにし、必要な湿気は霧吹きで補います。
店長のやり方(2025年1月から続けている実際の管理)
ここからは、店長が実際にやっている管理です。育て始めてからずっと同じやり方で続けています。

1週間は、水を器に1cmの深さで入れます。翌週は水を捨てて、ドライの状態。さらに翌週はまたお水1cm。この繰り返しです。
つまり「湿らせる週」と「乾かす週」を交互に置く、隔週のリズムです。これは、自生地でのスコールと乾燥のくり返しに近い考え方だと言えます。ずっと湿っているのでも、ずっと乾いているのでもない。この行き来こそが、着生ランにとって自然な状態なのだと思います。
水を替えるときは、古い水を捨て、器の内側を軽くすすいでから新しい水を入れます。器の内側がぬるっとしてきたら、水の傷み始めのサインです。夏場など気温が高い時期は、傷むのが早くなるので、においや濁りを気にしてあげてください。この「水は傷む」という感覚は、切り花の管理とまったく同じです(→ 切り花を長持ちさせる方法まとめ)。
毎朝の霧吹き

水とは別に毎朝、霧吹きを葉の表裏と根にかけています。
霧吹きは細かいミストが出るものがいいですよ。色々試しましたが、今使ってるのは霧がだいぶ細かいので気に入ってます。
レバーをゆっくり連続で動かすと霧が出続けるので、ついついあげすぎてしまうので要注意ですね!笑
葉水(はみず)には、いくつか意味があります。空気中の湿度を補うこと、葉の表面のほこりを落として光合成を助けること、そして乾燥を好むハダニの発生を抑えること。とくに冬の暖房が効いた部屋は、私たちが思っている以上に乾燥しています。
ただし、店長も言っているとおり「かけすぎ」には注意が必要です。葉の付け根(新芽が出てくる中心部分)に水がたまったまま夜を迎えると、そこから傷むことがあります。霧吹きは朝、そして株全体がその日のうちに乾く量で。この2点を守れば安心です。
容器の選び方——透明を選ぶ理由
水耕栽培の器は、なんでもいいと言えばなんでもいいのですが、選ぶときに考えたいポイントがいくつかあります。
- 透明であること……最大の理由は「根が見える」こと。根の色(緑か銀白色か)、傷んでいる根の有無、水位、水の濁り。この4つが、器を覗くだけで分かります。土や水苔なら掘り返さないと分からないことが、毎日ノーコストで確認できるのは大きな利点です。
- 口が広すぎず、狭すぎないこと……株がぐらつかず、かつ根が空気に触れられる形が理想です。花器やガラスの保存瓶がちょうどいいサイズ感になることが多いです。
- 安定感があること……コチョウランは花が咲くと、上が重くなって倒れやすくなります。底の重い器を選ぶか、支柱を添えられる形にしておくと安心です。
- 洗いやすいこと……水を替えるたびに内側をすすぎます。手が入る、あるいはブラシが届く形が扱いやすいでしょう。
ひとつだけ注意点を。透明な器は光を通すので、直射日光が当たる場所に置くと、水温が上がったり、器の内側に緑色の藻が発生したりすることがあります。藻そのものが即座に害になるわけではありませんが、見た目もよくないので、置き場所は次の章のとおり、直射日光を避けた明るい場所を選んでください。
失敗しやすいポイント
水耕栽培で株を弱らせてしまうケースには、はっきりした傾向があります。先回りして知っておきましょう。
1. 水を入れすぎる
いちばん多い失敗です。「水耕栽培なんだから、水にしっかり浸けよう」という善意が裏目に出ます。根が呼吸できずに腐り、気づいたときには茶色くスカスカ。器の底に1cm前後、と覚えてください。少なすぎて枯れることより、多すぎて腐ることのほうが、圧倒的に多いのです。
2. 根を切りすぎる
植え替えのときに「傷んでいそうだから」と、健康な根まで切ってしまう方がいます。コチョウランにとって根は、水を吸うだけでなく、養分を蓄え、株を支える器官です。減らせば減らすほど、回復に時間がかかります。迷ったら残す。緑や白でぷっくりしているものは、少しくらい見た目が悪くても残してください。
3. 暗すぎる場所に置く
「直射日光は苦手」という情報だけが強く残って、部屋の奥や日の差さない場所に置いてしまうケースです。コチョウランは直射日光こそ苦手ですが、光そのものは必要です。光が足りないと葉の色が濃く薄っぺらくなり、いつまでたっても花芽が上がりません。目安は「レースのカーテン越しの明るさ」です。
4. 葉の付け根に水をためる
霧吹きや水やりのあと、葉の付け根の中心部分に水が残ったままだと、そこから軟腐病などが入ることがあります。コチョウランはこの中心部分(成長点)から新しい葉を出すので、ここを傷めると株全体に関わります。水がたまったら、ティッシュでそっと吸い取ってあげてください。
5. 冷たい風・暖房の風が直接当たる場所に置く
冬の窓際、エアコンの風の通り道、玄関のたたき。どれもコチョウランには過酷です。とくに窓際は、日中は暖かくても、夜間にぐっと冷え込みます。
6. 寒い時期に植え替えや水耕への切り替えをする
株の力が落ちている時期に根を傷めるのは、リスクが大きい選択です。花が終わって暖かくなるのを待ちましょう。
7. 心配で触りすぎる
これは意外と見落とされがちですが、大事なことです。株の向きを毎日変えたり、根を触って確かめたり、置き場所を頻繁に移したり。植物は環境に慣れるまでに時間がかかります。とくに花芽をつけようとしている時期に頻繁に動かすと、花芽の形成が安定しないとも言われています。決めた場所で、静かに見守ってあげてください。

世話をしすぎないのも、世話のうち……ってことか。

そうなんです。見るのは毎日、手を出すのは必要なときだけ。それくらいがちょうどいいですよ。
置き場所と温度——実際の管理環境をご紹介します
ここからは、店長が水耕栽培しているコチョウランの、実際の置き場所の条件です。
置き場所は?

今、このコチョウランを置いてあるのは、すりガラスの前です。朝だけ数分、直射日光がすりガラス越しに入り、その後は俗に言われるレースのカーテン越しくらいの明るさがある程度です。

さて、ここからが今回いちばんお伝えしたかった、2025年11月の様子です。

左斜めに伸びる緑の茎の先に、花が咲いていました。(その様子もアップしなきゃですね。)
その茎の先端から少し下がった所から、ちょこん!と飛び出た部分がわかるでしょうか?
花が咲き終わった花茎の途中から、新しい花芽が顔を出している——これは、コチョウランを育てているとときどき起こることです。

このように枝の途中から花芽が上がることはあるようですが、一般的には、花が咲いた後に次にまた咲かせると株(本体)が疲れてしまうので、あまりおすすめしていないようです。
店長の言うとおりです。花茎の節から次の花芽が出る性質は、コチョウランの大きな魅力のひとつで、これを利用したのが世に言う「二度咲き」です。ただし、花を咲かせるのは株にとって相当な仕事です。連続して咲かせれば、そのぶん株の体力は削られていきます。
では、花が終わったあとの花茎は、どう扱えばいいのか。実はここ、意見が分かれるところなのです。
花が終わったあと——花茎はどこで切る?(両論あります)
インターネットで調べると、「2節目の上で切る」と書いてあるページと、「根元から切る」と書いてあるページの両方が見つかります。どちらかが間違っているわけではなく、目的が違うのです。
A. もう一度咲かせたいなら——節を残して切る
花茎の節を、株元から数えて2〜3節残した少し上で切る方法です。残した節から新しい花芽が伸びて、うまくいけば同じシーズンのうちにもう一度花が楽しめる、と言われています。
- 切るタイミングは、花が3分の2ほど咲き終わったころが目安とされます。
- 全部の花が枯れて時間が経ってしまうと、花茎自体が枯れ込んでしまい、二度咲きは難しくなります。
- 切り口は斜めにすると水がたまりにくい、とされています。
ただしこの方法では、株は花茎に養分を送り続けることになるため、しっかり休むことができません。二度咲きを毎年くり返すと株が消耗する、という指摘もあります。
B. 株を休ませたいなら——根元から切る
花が完全に終わってから、花茎を株元近くから切り落とす方法です。花茎に送っていた養分が株そのものに回るので、葉と根が充実し、翌年以降に立派な花を咲かせやすくなると言われています。
- 株が小さい、葉の枚数が少ない、根の状態が今ひとつ——こうした場合はBが安心です。
- 頂きものの胡蝶蘭を長く育てていきたい、という方にもBが向いています。
どちらを選べばいいか
目安として、こんなふうに考えるといいと思います。
- 葉が4枚以上あり、根も張っていて元気そう → A(二度咲きを狙う)を試してみる価値があります
- 葉が少ない、下葉が黄色い、根が心もとない → B(株を休ませる)
- 去年もその前も二度咲きさせた → 今年はBで休ませてあげる
二度咲きを楽しんだあとは根元切りに切り替えて株を休ませる、というふうに、年ごとに使い分けるのがよいとも言われています。植物にも、働く年と休む年があっていいのだと思います。

切り方ひとつで、そんなに変わるんですね。

はい。どっちが正解というより、その株に今なにをしてあげたいか、で決めるといいですよ。
もう一度咲かせるには——花芽がつく条件
「胡蝶蘭は一度きり」と思っている方が多いのですが、そんなことはありません。条件が整えば、家庭でも花芽をつけてくれます。ただし、これだけは強調しておきたいのですが、「こうすれば必ず咲きます」という方法はありません。株の充実度、品種、その年の気候。いろいろな要素が絡み合います。以下は「一般にこう言われています」という条件です。
鍵は、秋の夜の温度
コチョウランの花芽形成には、夜間の温度が18度前後に下がる期間が必要だと言われています。目安としては、秋(9月〜11月ごろ)に最低気温18度前後の環境が20日〜40日ほど続くこと。大輪系ほど長い期間が必要で、ミニ系は温度条件があまり要らず、株が充実すれば花芽をつけるとも言われます。
ここで多くのご家庭がつまずくのが、実は暖房です。秋から冬にかけて室内をずっと20度以上に保っていると、コチョウランは「季節が変わった」と気づけません。花芽をつけるきっかけを与えるには、夜のあいだだけでも少し涼しくなる環境が必要になります。
ただし、寒暖差が激しすぎるのも困ります
昼夜の温度差が20度以上あるような環境では、せっかく出た花芽が枯れてしまうことがある、とも言われています。「夜だけ涼しい」と「昼夜が激しく振れる」は違うということです。窓辺に置きっぱなしで、日中は日差しで暑く夜は外気なみに冷える、という環境はあまり良くありません。
花芽が出てからのこと
- 花芽は株元のあたりから、黒っぽい細い棒のような姿で現れます。
- そこから開花までは、およそ2〜3か月かかると言われています。気の長い話ですが、毎日少しずつ伸びていく様子は本当に楽しいものです。
- 花芽が伸びてきたら、株の向きを変えないこと。コチョウランは光の方向に合わせて花の向きを決めるので、途中で回すと花の向きがばらばらになります。
- 花茎が伸びたら支柱を添えてあげると、姿よく咲きます。
そして、根と葉を充実させることが結局いちばんの近道
花は、株の体力の余剰から生まれます。温度や日長をどう工夫しても、根が傷んで葉が薄い株は、咲かせるだけの余力を持っていません。
- 春から秋の生育期に、葉をしっかり増やす
- 根を傷めない水加減を守る(乾く時間をきちんと作る)
- レースカーテン越しの明るさを、一年を通して確保する
- 生育期には薄めの液体肥料を控えめに。ただし冬と、株が弱っているときは与えない
遠回りに見えて、これが一番の近道です。咲かせようとするのではなく、健康に育てる。そうすれば、株のほうから咲いてくれます。

咲かせるんじゃなくて、咲きたくなるようにする、かあ。
まとめ——水・温度・光の三つ

今回は超久々の更新になってしまいましたが、水耕栽培のコチョウランの今!をご紹介してみました。
2株あったのですが、父親が育ててみたいというので、1株は実家に送りました。実家の方が暖かいので、成長は早いようです。
やはり植物が育つには「水」「温度」「光」この3つの要素が大切なんだなぁ〜と思いました。
同じ日に同じ場所から旅立った2株が、置かれた環境の違いだけで違う育ち方をする。これほど分かりやすい実験はありません。植物は、置かれた場所の条件を、そのまま姿にして返してくれます。
最後に、この記事の要点をまとめておきます。
- コチョウランは着生ラン。もともと土に生えていないので、水耕栽培と相性がいい
- ただし根を水に沈めきらない。器の底に1cm前後、残りの根は空気に触れさせる
- 根の色が水加減を教えてくれる。緑=潤っている/銀白色=乾いている
- 湿らせる期間と乾かす期間を交互に作るのが、自生地に近いリズム
- 光はレースカーテン越し。暗すぎる場所はNG
- 温度は15〜25度が適温、冬も最低10度以上を保ちたい
- 花後の花茎は、二度咲きを狙うなら節を残して、株を休ませたいなら根元から
- もう一度咲かせるには、秋の夜温18度前後の期間が鍵と言われている
- そして何より、根と葉を充実させることが咲かせる近道
コチョウランの水耕栽培は、「上手に育てる技術」というより、「毎日ちょっと覗く習慣」に近いのだと思います。透明な器の中で、根が緑になったり銀色になったりするのを眺めているだけで、この植物が何を求めているかが、だんだん分かってきます。
いただいた胡蝶蘭を、花が終わったからと処分してしまう前に。一度、鉢から出して根を見てあげてください。案外、まだまだ元気だったりするものです。
では、今回はこの辺で。ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます!!

すりガラスというのが、なかなか良い条件だと思います。ガラス自体が光を拡散してくれるので、直射日光の強さがやわらぎ、それでいて明るさは十分に入る。コチョウランに理想的とされる「レースカーテン越しの光」を、カーテンなしで実現している状態です。
もしご自宅にすりガラスの窓がなければ、南向きや東向きの窓辺にレースのカーテンを引く、あるいは窓から1〜2メートル離れた位置に置く、といった方法で近い明るさが作れます。判断のコツは「日中、その場所で新聞や本の細かい字が無理なく読めるか」。読めるなら、光量としてはおおむね足りています。
温度は?

部屋の温度は、昼間はエアコンを切っているので、11月の気温ですと昼間は別の窓から太陽光線が入るので、もう少し暖かいと思いますが、夜帰ってくると室温は15度くらいです。
コチョウランは熱帯生まれですから、寒さには強くありません。一般的には15度〜25度が適温、冬でも最低10度以上を保ちたいとされています。10度を下回る環境が続くと、葉が黄色くなったり、株そのものが弱ったりします。
店長の環境の夜間15度は、適温の下限あたり。「元気に伸びる温度」ではありませんが、「耐えられる温度」ではあります。だからこそ、この記事の元になった11月の観察でも、店長はこう書いていました。

これから気温が下がる時期なので、成長はゆっくりだと思いますが、様子を見ていきたいと思います。
冬のあいだ、成長が止まったように見えても、それは異常ではありません。低温期は生育がゆっくりになるのが自然です。この時期にあわてて肥料を足したり、水を増やしたりすると、かえって根を傷めることになります。
冬に気をつけたいこと
- 夜間の窓際は要注意。日中は暖かくても、夜は外気に近い温度まで下がります。夜だけ部屋の内側に移動させる方法もあります。
- 水の頻度は、暖かい時期より控えめに。気温が下がると乾きが遅くなるので、同じペースだと過湿になります。
- 水やりは、晴れた日の暖かい時間帯に。夜に濡れたまま冷え込むのを避けるためです。冷たい水よりぬるま湯が安心とも言われています。
- 暖房の風が直接当たらない場所へ。乾燥しすぎるとハダニが出やすくなります。
- 暖房の効いた部屋は乾燥するので、朝の葉水がより意味を持ちます。
こんな所から花芽が出たよ〜!!
KIKYOYA FLOWERS
東京・神楽坂の花屋 桔梗屋
季節のお花、観葉植物、贈りもののご相談を承っています。
ご自宅用の一輪から、お祝い・お供えのお花まで、どうぞお気軽に。


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