お墓参りのお花——選び方・本数・避けたい花・持ち物まで、花屋がやさしく解説

花屋さん

お墓参りの前の日、花屋の店先で長く迷っている方がいらっしゃいます。菊を手に取っては戻し、色とりどりの花束を眺めては、また菊に戻る。声をかけると、たいてい同じことをおっしゃいます。「これで合っているのか、自信がなくて」。

お墓参りのお花には、たしかに昔から言い伝えられてきた「かたち」があります。一対で供える、奇数にする、とげのある花は避ける——。けれどそのどれもが、宗派によって、地域によって、ご家庭によって、そして霊園の決まりによって、少しずつ違います。「これが正解」と一つに決めてしまうことのほうが、むしろ現実からは遠いのです。

この記事では、東京・神楽坂の花屋として日々お墓参りのお花をお作りしている立場から、よく言われている作法とその理由、そして「実際のところどうすればいいか」を、できるだけ正直に整理しました。お盆でも、お彼岸でも、命日でも、法要でも。いつ読んでも役に立つように書いています。

店長
店長

最初にお伝えしたいのは、「間違えたらどうしよう」と怖がらなくて大丈夫、ということです。お花を持って行こうと思った時点で、いちばん大事なところはもう出来ています。


  1. なぜ、お墓に花を供えるのでしょう
    1. 仏教では「花を供えること」が古くから大切にされてきた
    2. 「忍辱(にんにく)」になぞらえる考え方
    3. 「故人を偲ぶ」という、いちばん素直な理由
  2. 「一対(いっつい)」とは——左右に同じものを供える形
    1. 片方だけでも、失礼にはあたりません
  3. 本数は何本?——「奇数がよい」と言われる理由
    1. 実務的には「7本くらいが上限」
    2. 「奇数」は本数だけでなく形の話でもある
  4. お墓参りによく使われる花——定番とその理由
    1. 菊(キク)——散らない、日持ちする、通年ある
    2. 脇を固める、頼りになる花たち
  5. 季節ごとの選択肢——その時期にいちばん元気な花を
    1. 春(3月〜5月/春のお彼岸)
    2. 夏(6月〜8月/お盆)
    3. 秋(9月〜11月/秋のお彼岸)
    4. 冬(12月〜2月)
  6. 色の組み合わせ——迷ったときの目安
    1. 四十九日を迎えるまでは、白を基調に
  7. 避けたほうがよいと言われる花——ただし「絶対ダメ」ではありません
    1. とげのある花
    2. つる性の花
    3. 香りが強すぎる花
    4. 毒のある花
    5. 花びらがぼとりと落ちる花
    6. 真っ赤すぎる色
    7. 「故人が好きだった花を供える」という考え方
  8. 夏のお墓参りで、花をできるだけ長持ちさせる
    1. 1. 早朝か夕方に行く
    2. 2. 花立てを洗う
    3. 3. 水に浸かる部分の葉をすべて取る
    4. 4. 供える直前に、水の中で切り戻す
    5. 5. 深植えしない、詰め込まない
    6. 6. 直射日光と風の当たり方を見る
  9. お墓参りの持ち物リスト
    1. お供えするもの
    2. 掃除に使うもの
    3. 自分を守るもの(夏はとくに重要)
  10. お墓での手順——掃除から合掌まで
    1. 花はどちらを向ける?
    2. 火は息で吹き消さない
  11. 枯れた花の片付け——供えたあとのこと
    1. 霊園によってルールが違います
    2. 持ち帰った花は、どうする?
  12. 造花・プリザーブドフラワーはあり?
    1. 1. 霊園によっては禁止されています
    2. 2. 「香」が欠けるという考え方もある
    3. 組み合わせるという手もあります
  13. よくあるご質問
    1. 予算はどのくらいが目安ですか
    2. 花立てがいっぱいだったら?
    3. ラッピングは外したほうがいい?
    4. お墓参りの服装は?
    5. お墓が遠くて行けないときは
  14. 神楽坂で、お墓参りのお花をご相談ください
  15. 🛒 お墓参りに持っていきたい道具
  16. おわりに——「正解」より「その人らしさ」を
    1. 東京・神楽坂の花屋 桔梗屋

なぜ、お墓に花を供えるのでしょう

そもそも、どうして私たちはお墓に花を供えるのでしょうか。当たり前のようにしていることですが、理由をたずねられると答えに詰まる方が多いところです。

まず前提として、供花(くげ・きょうか)の意味には諸説あり、一つに定まったものではありません。そのうえで、よく語られている考え方をいくつかご紹介します。

仏教では「花を供えること」が古くから大切にされてきた

仏教は成立の当初から花と深い関わりを持ち、経典のなかでも花を供える功徳が説かれてきたと言われています。お仏壇やお墓に供える「灯(ともしび)・華(はな)・香(こう)」——ろうそく、花、線香——は、供養の基本の組み合わせとして知られています。お墓の前でこの三つを整える所作は、そのまま古い形を今に伝えているわけです。

「忍辱(にんにく)」になぞらえる考え方

もう一つ、よく紹介されるのが「忍辱(にんにく)」に重ねる見方です。忍辱とは、仏教の修行徳目である六波羅蜜の一つで、耐え忍ぶことを指します。厳しい風雨や寒暖に耐えてようやく花を咲かせる姿、そして供えられたあとも静かに咲き続ける姿が、修行に耐える姿と重ねられてきた——という説明です。

花屋として、この解釈にはいつも少し胸を打たれます。切り花は、切られたその瞬間から終わりに向かって歩き出す存在です。それでも数日間、精いっぱいきれいでいようとする。その姿に意味を見出した昔の人の感性は、たしかなものだったのだと思います。

「故人を偲ぶ」という、いちばん素直な理由

そして、もっとも現代的で、もっとも自然な理由がこれです。故人が好きだった花を供えることで、その人を思い出す。花を選んでいる時間そのものが、故人と過ごす時間になる。難しい教義を知らなくても、この気持ちは誰にでもあります。

なお、宗派によって考え方は異なります。たとえば浄土真宗では、お供えは「亡くなった方に差し上げるもの」というより「仏さまを敬い、浄土のありさまを表すもの」として捉えられる、と説明されることが多いです。また神道では、お墓(奥津城/おくつき)に榊(さかき)を供えるのが一般的とされますが、地域によっては神道でも花を供えることがあります。ご自身の家がどの考え方に沿っているかは、菩提寺やご親族に確認するのがいちばん確実です。

精霊くん
精霊くん

意味がひとつじゃないってことは、どれかを選べるってことでもあるのかも……


「一対(いっつい)」とは——左右に同じものを供える形

お花を注文するときに「一対でお願いします」と言われることがあります。この「一対(いっつい)」という言葉が、最初のつまずきポイントかもしれません。

一対とは、同じ内容の花束を2つ用意し、お墓の左右にある花立てにそれぞれ供える形のことです。多くのお墓には、正面に向かって左右に一つずつ花立てが備えられています。そこに左右対称になるように供えると、全体が整って見えます。

なぜ左右対称にするのかについても諸説あり、単純に見た目が美しいからという説明のほか、極楽浄土の荘厳(しょうごん/飾り整えること)を表しているから、という説明も見かけます。お寺の本堂の花や灯明が左右一対で置かれているのと、同じ発想ですね。

片方だけでも、失礼にはあたりません

ここが、いちばんお伝えしたいところです。片方の花立てにだけ供える形(「一基/いっき」と呼ばれます)でも、仏さまやご先祖に失礼になるわけではない、と一般に説明されています。近年はむしろ一基のスタイルも広く見られるようになってきました。

実際、次のような場面では一基のほうが現実的です。

  • すでにご親族が花を供えていて、片側が埋まっている
  • 予算を抑えたいけれど、少しでもいい花を選びたい
  • 電車やバスで遠方から行くので、荷物を減らしたい
  • お墓の形状で花立てが一つしかない、または納骨堂などで場所が限られている

また、法要の日など人が多く集まる場面では、あえて左右を親族どうしで分担することもあります。「一対でなければ」と無理をするより、その場に合わせて整えるほうが、結果的にきれいに収まることが多いのです。

お客様
お客様

実家の墓に行くのですが、姉が先に着いているかもしれなくて……どうしましょう?

店長
店長

そういうときは一基で十分ですよ。もし花立てが両方埋まっていたら、束のまま墓前に置いてお参りするという方法もあります。困らないように、と考えておくのがいちばんです。


本数は何本?——「奇数がよい」と言われる理由

お供えの花は、片側につき3本・5本・7本といった奇数にするのがよい、と一般に言われています。理由としてよく挙げられるのは次のようなものです。

  • 偶数は「割り切れる」ため、縁が切れることを連想させるとされる
  • 古くから奇数を陽の数、縁起のよい数とする考え方がある
  • 実際に生けたとき、奇数のほうが左右対称の三角形・菱形にまとまりやすい

いずれも「そう言われている」という説であって、経典に明記されているような厳密な決まりではありません。地域によって、ご家庭によって、菩提寺によって考え方は異なります。「うちは昔から本数は気にしない」というご家庭も珍しくありません。

実務的には「7本くらいが上限」

花屋の実感としては、一般的な墓石の花立てに無理なく生けられるのは、片側7本程度までです。それ以上詰め込むと、次のような問題が起きます。

  • 茎が押し合って水が上がりにくくなり、かえって早く傷む
  • 密集して蒸れ、虫がつきやすくなる
  • 風で花立てごと倒れやすくなる

「たくさん供えたほうが気持ちが伝わるのでは」と思われる方は多いのですが、花にとっては逆効果になりがちです。特に夏場は、少し余裕を持たせた本数のほうが長くきれいでいてくれます。

「奇数」は本数だけでなく形の話でもある

3本なら、真ん中に背の高い花を1本、その左右に少し低い花を1本ずつ。5本なら、その外側にもう一段。こうすると自然に三角形(正面から見ると菱形)に収まります。奇数がよいと言われるのは、この「中心が決まる」ことによる収まりのよさとも無関係ではないでしょう。


お墓参りによく使われる花——定番とその理由

「なぜ菊なのか」。これもよく聞かれる質問です。答えは意外なほど実務的です。

菊(キク)——散らない、日持ちする、通年ある

菊がお供えの定番になった理由として、よく挙げられるのはこの三つです。

  • 花もちがよい——切り花のなかでも日持ちする部類で、屋外でも比較的粘る
  • 花びらが散りにくい——弱っても花びらがばらばらと落ちにくく、お墓を汚しにくい
  • 一年中手に入る——日本では周年生産されており、季節を選ばない

加えて、日本では古くから高貴な花として扱われてきた歴史もあります。ただ、花屋として言えば、いちばん大きいのは「散らないこと」です。次に来る人のことを考えると、これは想像以上に大きな価値なのです。

大輪の輪菊(りんぎく)のほか、小さな花が枝分かれして咲くスプレーマムも、近ごろはよく使われます。スプレーマムは色数が豊富で、明るく柔らかい印象になります。

脇を固める、頼りになる花たち

  • スターチス——花びらがカサカサとした質感で、散りにくく非常に持ちがよい。ドライになってもかたちが残る。紫・白・ピンクなど色数も豊富で、束の輪郭を作るのに重宝します
  • りんどう——夏の終わりから秋にかけての花。凛とした青紫が美しく、秋のお彼岸の定番
  • ケイトウ——真夏の暑さに強く、7月頃から11月頃まで長く出回ります。ふっくらとした質感で、赤・オレンジ・ピンクなど。夏のお供えの実力派
  • カーネーション——通年出回り、色数が多く、花もちも良好。故人が女性の場合に選ばれることも多い花です
  • トルコキキョウ(リシアンサス)——初夏から夏の花。フリルのような花びらに上品さがあり、白や淡い紫はお供えによく合います
  • グラジオラス——暑さに強く、水をよく吸う。まっすぐ伸びる姿が花束の背骨になります
  • アイリス——初夏の花。すっきりとした青紫が涼やかです

これらに、ヒバやドラセナなどの緑を添えると、束全体が引き締まります。緑は花より丈夫なので、花が終わったあとも見苦しくなりにくいという利点もあります。

スタッフ君
スタッフ君

スターチス、地味だと思ってたんですけど、これが入ってると束が全然崩れないんですよね。


季節ごとの選択肢——その時期にいちばん元気な花を

お供えの花は「格式」で選ぶより、その季節にいちばん元気な花を選ぶほうが、結果的にきれいに長持ちします。旬の花は流通量が多く、鮮度がよく、価格も安定しているからです。

春(3月〜5月/春のお彼岸)

アルストロメリア、ガーベラ、スイートピー(つる性を気にする場合は避ける方も)、ストック、キンセンカなど。春は花の種類がもっとも豊富な季節です。淡い色を組み合わせると、彼岸の柔らかな日差しによく合います。

夏(6月〜8月/お盆)

ケイトウ、グラジオラス、トルコキキョウ、ヒマワリ(明るすぎるという考え方もあるので、家の方針次第)、輪菊、スターチス。夏はとにかく「暑さに強いこと」が最優先です。繊細で美しい花より、たくましい花を選んでください。

お盆全般の流れやお供えの考え方については、お盆と花屋——供花・お供え・初盆までにまとめています。あわせてご覧ください。

秋(9月〜11月/秋のお彼岸)

りんどう、ダリア、ケイトウ、スプレーマム、吾亦紅(われもこう)。秋は日本の墓花がもっとも美しく見える季節かもしれません。青紫や深い赤が、乾いた空気によく映えます。

冬(12月〜2月)

菊、カーネーション、シンビジウム、アマリリス、そして松やヒバなどの常緑の枝もの。冬は気温が低いため、花そのものは長持ちします。ただし寒冷地では花立ての水が凍り、割れてしまうことがあります。凍結の心配がある地域では、水を少なめにする、当日持ち帰るなどの対応をされる方もいます。


色の組み合わせ——迷ったときの目安

色にも厳密な決まりはありませんが、伝統的な組み合わせとしてよく紹介されるのは次の形です。

  • 3色——白・黄・紫。もっとも落ち着いた、失敗のない組み合わせ
  • 5色——白・黄・紫・赤・ピンク。華やかで、法要やお盆など人が集まる場面に

この「5色」は、仏教の五色(ごしき)の考え方に由来するとも言われますが、これも諸説あります。

四十九日を迎えるまでは、白を基調に

亡くなってから日が浅い時期(四十九日の忌明けを迎えるまで、と説明されることが多いです)は、白を中心に、紫や淡い色を添える形が一般的とされています。忌明け以降は、少しずつ色を入れていっても構わないという考え方が広く見られます。

ただし、これも地域やご家庭、菩提寺によって異なります。初盆・新盆の花について特に気になる場合は、ご親族の年長の方に一度うかがってみるのが確実です。


避けたほうがよいと言われる花——ただし「絶対ダメ」ではありません

ここが、この記事でいちばん誤解の多いところです。まず、一般に「避けたほうがよい」と言われている花と、その理由を整理します。

とげのある花

バラ、アザミなど。「殺生」を連想させるという説明のほか、手入れをする人が怪我をする恐れがあるという現実的な理由も挙げられます。後者のほうが、実務的には切実です。とげをすべて取り除けば供えても構わない、という考え方もあります。

つる性の花

アサガオ、クレマチス、スイートピーなど。つるが墓石に巻きついたり、隣のお墓にまで伸びたりするおそれがあるため、と説明されます。切り花として短く使う分には気にしない、という方もいます。

香りが強すぎる花

ユリ、クチナシ、キンモクセイなど。虫を呼び寄せてしまうこと、そして線香の香りを邪魔してしまうことが理由として挙げられます。ただしユリは、お供えの花としてごく普通に使われることも多く、地域や家によって扱いが大きく分かれる花です。ユリを使う場合は、花粉が墓石や衣服につくと落ちにくいので、開いたら雄しべの葯(やく)を取り除いておくと安心です。

毒のある花

スイセン、ヒガンバナ、スズランなど。ヒガンバナは、名前や墓地に自生するイメージから避けられることも多い花です。

花びらがぼとりと落ちる花

ツバキ、サザンカなど。花が丸ごと落ちる姿が縁起が悪いとされること、そして墓石や参拝者の衣服を汚しやすいことが理由です。

真っ赤すぎる色

強い赤が血を連想させる、あるいは華美に過ぎるとして避けられることがあります。とくに忌明け前は控えるという考え方が一般的です。ただし、伝統的な五色の組み合わせにも赤は入っており、必ずしも禁忌というわけではありません。

店長
店長

ここまで読んで、「じゃあバラは絶対だめなんだ」と思われたかもしれません。でも、ちょっと待ってください。

「故人が好きだった花を供える」という考え方

近年は、故人が生前好きだった花であれば、いわゆるタブーとされる花であっても供って構わないという考え方が、広く受け入れられるようになってきました。多くの終活・供養の情報サイトでも、この点は明記されています。

バラが大好きだった方に、菊だけを供えるのが正しいのかどうか。花屋としては、そこに絶対の答えはないと思っています。上に挙げた「避けたほうがよい」の理由をよく見ると、その多くは信仰上の禁止ではなく、周囲への配慮や手入れの都合です。であれば、配慮のほうを工夫すれば済む場合も多いのです。

  • バラを供えたい → とげをすべて落としてから持って行く
  • ユリを供えたい → 花粉(葯)を取り除いておく
  • 香りの強い花を使いたい → 本数を1〜2本にとどめ、他は控えめな花で構成する
  • 散りやすい花を使いたい → 当日持ち帰る前提で供え、置きっぱなしにしない

ただし、ご親族のなかに伝統的な作法を大切にされている方がいる場合は、事前に一言相談しておくことをおすすめします。故人を思う気持ちが、生きている人同士のわだかまりの種になってしまっては、本末転倒ですから。この記事も、どの作法を否定するものでもありません。


夏のお墓参りで、花をできるだけ長持ちさせる

「せっかく供えたのに、次に来たらもう茶色くなっていた」。夏のお墓参りで、いちばん多いお悩みです。炎天下の花立ては、花にとって想像以上に過酷な環境です。それでも、いくつか工夫できることがあります。

1. 早朝か夕方に行く

もっとも効果があるのがこれです。真昼の炎天下に供えた花は、その日のうちにぐったりします。朝のうち(できれば午前中の早い時間)に供えれば、いちばん暑い時間帯を花が水を吸い上げた状態で迎えられます。参拝する人の熱中症対策としても、早朝や夕方が安全です。

なお「お墓参りは午前中に」と言われることもありますが、これも地域や家の慣習によります。夕方や夜のお参りを避ける地域もあれば、気にしない地域もあります。

2. 花立てを洗う

これは本当に見落とされがちです。花が早く傷む最大の原因は、暑さそのものより「水の中の雑菌」です。前回の花の残りかすが底に溜まった花立てに新しい花を挿しても、数日ともちません。

花立ての多くは、内側の筒が抜けるようになっています。抜いて、中を洗ってください。細長いブラシ(ペットボトル用のブラシが便利です)を一本カバンに入れておくと、驚くほど違います。

3. 水に浸かる部分の葉をすべて取る

水中に葉が入っていると、その葉が腐って一気に水が濁ります。花立てに入る深さの葉は、一枚残らず取り除いてください。これも効果の大きい、簡単な一手間です。

4. 供える直前に、水の中で切り戻す

茎の切り口は、時間が経つと乾いたり詰まったりして水を吸わなくなります。供える直前に、切れ味のよいハサミで斜めに切り直しましょう。水の中で切る「水切り」ができればさらに理想的です。バケツに水を汲んでから、その中で切ると簡単です。

切り花を長く楽しむための基本は、家の花瓶でもお墓の花立てでも同じです。詳しくは切り花を長持ちさせる方法まとめにまとめていますので、あわせてどうぞ。

5. 深植えしない、詰め込まない

茎を深く挿しすぎると、水に浸かる面積が増えて腐りやすくなります。花立ての水は、多ければよいというものではありません。茎の下から数センチが浸かる程度で十分です。本数も、前述のとおり片側7本程度までに。

6. 直射日光と風の当たり方を見る

同じ霊園でも、墓石の向きや隣接する木の影で条件は変わります。もし選べるなら、日陰になりやすい側の花立てに、傷みやすい花を配置するのも一つの手です。

お客様
お客様

花立てを洗うなんて、考えたこともありませんでした……。

店長
店長

いい花を買うことより、花立てを洗うことのほうが効きます。花屋がこう言うのも変ですが、本当なんです。


お墓参りの持ち物リスト

霊園に道具の貸し出しがある場合も多いので、事前に確認できると荷物を減らせます。ここでは「あると困らない」ものを一通り挙げます。

お供えするもの

  • お花(一対または一基)
  • 線香
  • ろうそく
  • ライターまたはマッチ(風の強い日は、風防つきのライターや線香用の着火器が便利)
  • 数珠(じゅず)
  • お供え物(故人の好きだったお菓子や果物など。半紙や懐紙を敷くと丁寧です)

掃除に使うもの

  • 手桶とひしゃく(霊園に備え付けの場合が多い)
  • スポンジ、雑巾、タオル(墓石を傷つけない柔らかいものを。金属たわしは避けてください)
  • 歯ブラシまたは細いブラシ(彫刻部分や花立ての内側に)
  • ほうき、ちりとり、軍手やゴム手袋
  • ゴミ袋(数枚あると安心)
  • 花ばさみ(切り戻し用。切れ味のよいものを)

自分を守るもの(夏はとくに重要)

  • 飲み物(多めに。塩分の摂れるものも)
  • 帽子、日傘
  • 虫よけスプレー、かゆみ止め
  • タオル、うちわ、携帯扇風機
  • 歩きやすい靴(ヒールは墓地の土や砂利を傷めることがあるので避けたほうが無難です)

お盆の時期のお墓参りは、真夏の炎天下での立ち仕事です。ご高齢の方やお子さん連れの場合は、無理をせず、短時間で切り上げる判断も大切です。体調を崩してしまっては、ご先祖さまも喜びません。


お墓での手順——掃除から合掌まで

一般的によく紹介されている流れをご紹介します。ただし、順序や作法は宗派・地域・霊園によって異なります。ご自身の家のやり方があれば、そちらを優先してください。

  • 1. 手を清め、ご挨拶——寺院墓地であれば、まず本堂にお参りしてから墓所へ向かうのが丁寧とされます
  • 2. 掃除——周囲の落ち葉や雑草を取り、墓石の汚れを水と柔らかいスポンジで洗います。彫刻部分は歯ブラシで。花立ての内側も忘れずに
  • 3. 打ち水——ひしゃくで墓石に静かに水をかけます。「墓石を清める」意味とも「渇きをいやす」意味とも説明されます
  • 4. 花を供える——左右の花立てへ。切り戻しをしてから挿します
  • 5. お供え物を置く——半紙などを敷いた上に
  • 6. 水鉢に水を入れる——ただし浄土真宗のお墓には水鉢がないことが多いとされます
  • 7. ろうそくを灯し、線香に火をつける——線香はろうそくから移すのが一般的
  • 8. 合掌——数珠を手にかけ、故人に向かって手を合わせます
  • 9. 片付け——お供え物は持ち帰るのが基本。ゴミも忘れずに

花はどちらを向ける?

お参りする側(自分たちのほう)に花の正面を向けるのが一般的とされています。これは「仏さまを敬い、その姿を私たちが仰ぎ見る」という考え方によるものだと説明されることが多いです。花を墓石側に向けてしまうと、供えた花が誰からも見えなくなってしまいますね。

火は息で吹き消さない

ろうそくや線香の火は、口で吹き消さず、手であおいで消すのがマナーとされています。人の息は穢れ(けがれ)を含むという古い考え方によるものです。

また、火の始末は必ず確認してください。ろうそくや線香を燃えたまま残して帰るのは、火災の危険があります。霊園によっては火気の持ち込みや残置を制限している場合もあります。

精霊くん
精霊くん

掃除って、じつは会いに行ってる時間そのものなのかもしれないなあ……


枯れた花の片付け——供えたあとのこと

供えることと同じくらい大切なのが、そのあとです。

枯れた花をそのままにしておくと、花立ての水が腐って強いにおいを放ち、虫がわきます。墓石にシミが残ることもありますし、なにより隣接するお墓へのご迷惑になります。供えた花の後始末は、供えた人の務めと考えておくのがよいでしょう。

霊園によってルールが違います

実際の運用は、霊園・墓地によってかなり異なります。よく見られるのは次のパターンです。

  • 供えたまま帰ってよい——管理者が定期的に片付けてくれる。屋外の一般的な霊園に多い
  • 当日持ち帰る——美観・衛生管理のため。大規模な霊園や新しい霊園で増えています
  • 生花そのものが不可——屋内の納骨堂などに多い。造花やプリザーブドフラワーで対応する形

まずは管理事務所に確認してください。掲示板や規約に書かれていることも多いですし、電話で聞けばすぐに教えてもらえます。とくにお盆のように参拝者が集中する時期は、ルールが厳しく運用されることもあります。

持ち帰った花は、どうする?

まだ元気な花を持ち帰った場合、そのまま処分してしまうのは少しもったいないものです。切り戻して家の花瓶に生け直すこともできますし、お仏壇に移すこともできます。

お盆に供えた花の見送り方については、お盆のお花を「美しく見送る」作法で詳しく書いています。花の終わりまで丁寧に付き合うことも、供養のかたちの一つだと思っています。


造花・プリザーブドフラワーはあり?

近年とても多いご質問です。遠方でなかなかお参りに行けない、ご高齢で手入れが難しい、真夏はすぐに枯れてしまう——理由はさまざまです。

結論から言えば、宗教的に「造花はいけない」と決まっているわけではありません。ただし、実務的には二つ注意点があります。

1. 霊園によっては禁止されています

これがいちばん重要です。景観の統一のため、あるいは劣化した造花が長期間放置されるのを防ぐため、造花の使用を禁止している霊園・寺院墓地があります。逆に、屋内の納骨堂などでは生花が禁止で造花のみ可、というところもあります。

必ず管理者に確認してください。これは作法の問題ではなく、施設の規約の問題です。

2. 「香」が欠けるという考え方もある

前述の「灯・華・香」のうち、造花には香りがないため供養の要素が一つ欠けるのではないか、という見方もあります。ただしお線香を焚けば香は供えられますし、そもそも菊やスターチスなど、生花でもほとんど香らない花はたくさんあります。あまり気に病まれなくてよいのではないかと、個人的には思います。

組み合わせるという手もあります

お参りに行った日は生花を供え、次に来られるまでの期間は造花で、という使い分けをされる方もいます。屋外の造花は、紫外線で色褪せたり、風で飛ばされたりします。造花を使う場合も、定期的に様子を見に行き、傷んだら取り替える——この点は生花と変わりません。

店長
店長

「生花でなければ心がこもっていない」とは、私は思いません。行けない距離、動けない体、それぞれの事情のなかで最善を選ぶ。それも立派なお供えだと思います。


よくあるご質問

予算はどのくらいが目安ですか

一般的な目安としては、一束あたり500円〜1,000円程度、一対で1,000円〜3,000円程度と紹介されることが多いです。もちろん、法要など改まった場面ではもう少し立派なものを、という選び方もあります。金額よりも、その場に合っているかどうかのほうが大切です。

花立てがいっぱいだったら?

すでにきれいな花が供えられている場合は、無理に差し替えず、束のまま墓前に置いてお参りするという方法があります。枯れた花が残っている場合は、片付けて自分の花を供えて構いません(片付けた花の処分方法は霊園のルールに従ってください)。

ラッピングは外したほうがいい?

花立てに挿す場合は、ビニールや紙のラッピングは外してください。水に浸かると水質が悪化しますし、風で飛ばされてゴミになります。外した包装は必ず持ち帰りましょう。

お墓参りの服装は?

法要を伴わない通常のお墓参りであれば、派手すぎない普段着で問題ないとされています。掃除をするので、動きやすく汚れてもよい服が実用的です。靴は歩きやすいものを。

お墓が遠くて行けないときは

ご自宅のお仏壇に花を供える、写真の前に花を飾る、という形でも構わないという考え方が広く見られます。お墓のある地域の花屋さんに配達や代参を相談できる場合もあります。行けないことを責める必要はありません。


神楽坂で、お墓参りのお花をご相談ください

桔梗屋は、東京・神楽坂の街かどの花屋です。お墓参りのお花も、日々お作りしています。

  • 一対でも、一基でも——ご希望の形でお作りします
  • 当日ご来店でも大丈夫——その日にある、いちばん状態のよい花でお作りします
  • 季節や気温に合わせて——真夏なら暑さに強い花を中心に。屋外に供えるとお伝えいただければ、そのつもりで組みます
  • ご相談だけでも——「四十九日前なんですが」「故人がバラが好きで」「本数はどうしたら」。遠慮なくお声がけください

お盆やお彼岸の時期は、お墓参り用のお花が特に多く出ます。ご希望の色や本数が決まっている場合、また一対でお作りする場合は、できればお早めにご相談いただけると確実です。

スタッフ君
スタッフ君

「屋外に供えます」って一言いただけると、組み方をけっこう変えられるんです。



🛒 お墓参りに持っていきたい道具

✂️ 坂源 ハンドクリエーション(花鋏)——供える直前の切り戻し用に。両刃で茎を潰しません

💧 クリザール フラワーフード——ご自宅の仏花にも。水替えのたびに

おわりに——「正解」より「その人らしさ」を

この記事では、お墓参りのお花について、言い伝えられている作法とその理由をできるだけ丁寧にご紹介してきました。最後に、いちばん大事なことをもう一度書いておきます。

ここに書いたことのほとんどは、「そう言われています」という説です。宗派によって、地域によって、ご家庭によって、そして霊園によって、正解は変わります。ですから、この記事を読んで「うちのやり方は間違っていた」と思う必要は、まったくありません。

作法というものは、本来、迷わないために生まれた知恵です。何をすればいいかわからないときに、とりあえずこうしておけば大丈夫、と背中を押してくれる。それが窮屈な決まりごとになって、人を花屋の店先で立ち止まらせてしまうなら、少し本末転倒だと思うのです。

覚えて帰っていただきたいのは、この三つだけです。

  • 迷ったら、菊を中心に、白・黄・紫で。これでまず外しません
  • 霊園のルールだけは確認する。造花の可否、持ち帰りの要不要は施設ごとに違います
  • 花立てを洗い、水中の葉を取る。どんな花を選ぶかより、花が長持ちします

あとは、その方が好きだった色を思い出してみてください。オレンジが好きだった人には、ケイトウやガーベラを一本混ぜてもいい。青が好きだった人には、秋ならりんどうがあります。お花を選びながら故人のことを考えている、その時間こそが、いちばんの供養なのではないでしょうか。

今年のお盆も、暑くなりそうです。どうかご無理のないように。水分を持って、朝の涼しいうちに。そして帰り道に、少しだけ空を見上げてみてください。

店長
店長

お墓参りのお花は、どうぞお気軽にご相談ください。「どんな花が好きな方でしたか」から、一緒に考えます。

※本記事でご紹介した作法・慣習には諸説あり、宗派・地域・ご家庭・霊園によって異なります。ご不明な点は、菩提寺や霊園の管理者、ご親族にご確認ください。


KIKYOYA FLOWERS

東京・神楽坂の花屋 桔梗屋

季節のお花、観葉植物、贈りもののご相談を承っています。
ご自宅用の一輪から、お祝い・お供えのお花まで、どうぞお気軽に。

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